切れ味鋭い浄霊

 一方でこんな証言もある。

 それは、總斎の行なう浄霊をいただいてもその時は何も感じないという感想である。その人によると、總斎の浄霊よりも若い先生のほうがよほど変化もあり、感じ方も強いという。決して多くはないのだが、たまにこんな感想を洩らす者もいた。この信徒はそれを總斎に率直に伝えたところ、
「名刀でものを斬る時は何も感じないものだよ」
 と、ニコッと笑って説明をしたという。

 たいていの人は、このような感想を言われれば気分を悪くする。しかし、總斎は自分の力がどのようなものであるのか的確に認識していたので、特に腹を立てることもなく、信徒が抱く当たり前の質問に、当然のように答えるのだった。この説明を受けた信徒も、言われてみればなるほどと思い当たるふしが多いため、納得したのである。總斎は、自分の行なう浄霊を通して、正しくこの力を理解してほしいと思っていたのだろう。彼は自らの力を過信して自惚れることもなく、また逆に過小評価を下すこともなかった。總斎は明主様から自分に与えられている力を完全に把握していたようである。

 いずれにせよ、總斎のみならず、明主様からいただいた浄霊の力は人類救済のための重要な手段であった。浄霊の大切さは当たり前のことではあるが、總斎が亡くなるまで力説していたことである。
 
 これは、宝山荘を拠点として宝生教会で布教を始めた昭和二十七年頃の話である。
 その日、その婦人は朝から浄化して浄霊を受けに来ていて、夫も心配して付き添ってきていた。やがて、婦人は坐ることもできずに横になって苦しみ出し、膝を曲げて海老のように丸くなり、ついには呼吸も困難な様子になってしまった。まわりの者が大急ぎで奥にいた總斎にお願いに行くと、總斎は、「どれどれ」
 と、ニコニコしながら出て来て、
「ハハァン、これは突き上げだね」
 と言い、さっそく浄霊を始めた。

 宝山荘の大広間である。先生の行なう浄霊を一目見ようと、その場に居合わせた人びとは浄霊中の總斎をぐるっと取り巻き、息をこらして見守った。總斎が指の先で鼠蹊腺の辺りをグッと押さえると、わずか数分で呼吸がやわらぎ、病人は仰向けになることができるようになった。さらに總斎は、左手の指で鼠蹊腺や腰骨の後ろの辺りを押さえながら、右手で浄霊を始めた。婦人が横臥した姿を見ると、次第に力が抜けおちていくのがはっきりと判るのだった。そして、姿勢がやわらかくなり、のびのびと身体を横にして寝ているようになり、そのうちに眠ってしまった。その間わずか十分ぐらいのことであった。やがて、婦人は急に起き上がって總斎にお礼を述べ、そのまま帰ってしまった。

 その場にいた人たちは初めは亞然として見ていたが、われに返って、總斎の浄霊力の偉大さに感服したのであった。
「私は浄化した人に向かって一度手を前額部天帝に向ければ、瞬間にその人のどこが浄化しているかが判る。だから、そのところに向かって霊気を集中すれば大方の浄化は三分でとれる。また、足の爪先の痛みは天帝でとれるのである」 
 と、總斎はつねづね語っていた。今回の婦人はまったくその通りであった。さらに、「突き上げが来た時、浄霊で救えなくっちゃ何もならないよ。これからだんだん“おひかり”が強くなるんだから、あっちにもこっちにも今日のような浄化の人が出てきた時、お救いができるようになっていないとね」
 と、浄霊実践の必要性と尊さを強調していたという。
「これからは一にも浄霊、二にも浄霊、三にも浄霊ですよ。理屈じゃ人は救えませんからね」
 また、
「腰と鼠蹊腺にしっかりと浄霊をしないと、アッという間にあの世に行っちゃう人がたくさん出てくるよ。今日の人は突き上げだったから助かった。まだよい方だ」
 と教えた。以前から總斎は大浄化時代の到来に備え、きちんと浄霊できることが大切だと力説していたのだ。

 總斎の浄霊に関する講話では、観世音菩薩とまず大きく書いて話を始めるのだった。それは一番位の高い神様が身をやつして、菩薩の姿に身を変えて衆生済度をする話である。その衆生済度の力が浄霊であり、したがって浄霊はまさに菩薩行である。そして、その力はますます必要とされていくという。

 このカは理屈ではない。世の中の多くの人は浄霊のカをなかなか認めようとはしない。總斎はこのことを実に易<やさ>しく、しかし説得力のある譬で説明していた。
「神様は見えますか。見えないでしょう。風は見えますか。見えないでしょう。でも……」
 と言って窓の外を指さして、
「ホラ、あの小枝が動いているのは見えるでしょう。あれは見えない風が動いているのですよ」

 この何気ない總斎の言葉に深い感銘を受ける人が多かった。さらに、 
「世界救世<メシヤ>教は浄霊の奇蹟だよ。浄霊一本だ。理屈や説教するから判らないのだ」 
 と、自然の摂理の背後に存在する深遠な明主様の教えの、その糸口を説いていた。