電話で診断

 總斎の浄霊力は常人の想像を超えてはるかに強力であり、明主様の他の弟子との力の差をいつも見せていた。

 ある信徒がかなりひどい浄化で新宿の治療所に運び込まれた。昭和十九年も暮れようとしていたある日のことである。總斎は当時、すでに明主様が熱海にお移りになられたあとの、世田谷上野毛の宝山荘に移っていたが、新宿にいた弟子たちの懸命な浄霊にもかかわらず、手の施しようもないため、宝山荘の總斎に連絡をとることになった。そこで、容態を説明して、
「先生、どこをどのように浄霊したらよろしいでしょうか」
 と訊ねたところ、電話の向こうでしばらく沈黙があったあと、總斎は、
「どんな無理をしてでも私のところに連れてきなさい」
 とだけ言った。戦時中のことゆえ車が自由になるはずはない。患者を背負うなど、みなで苦労しながらやっと宝山荘の總斎の許へ連れていったところ、總斎は、
「ああ、やっぱり。これはあなた方にはまだまだ無理ですね。さっき電話をもらった時からこういうことだと判っていましたから、みなに無理を言ってここまで運んできてもらったのです」

 と言い、さっそく浄霊を始めた。そうすると、ただ一回の浄霊で熟も下がり病気はアッという間にすっかり治ってしまったのである。

 余人には真似のできない、そして常人の及びもつかないほどの浄霊力を持っていることは、總斎自身にもよく判っていた。

 この總斎の力は、単に悪いところを浄霊するだけではなかった。すなわち電話の向こう側にある患者の症状をいち早く察知する力、身体のどこに浄霊を施すべきかを見抜く直観、そして強い浄霊力を発揮するには どのように心がけるかの的確な判断力を總斎は併せ持っていた。だからこそ、彼の強い浄霊力が遺憾なく発揮できたのである。