あとがき

 本書『東方の光』は、世界救世教・岡田茂吉教祖の生誕百年を記念して、その七十二年に及ぶ多彩<たさい>な生涯を紹介する目的をもって編纂されたものであります。

 信者は、教祖を「明主様」と呼んでおりますが、本書では、その明主様の生涯を上・下二巻に収め、上巻を生誕から立教までの歩みとし、下巻は立教よりご昇天にいたるまでの教団変遷の中で過ごされたご事績を中心に描いたものであります。その内客は昭和三十六年、教祖伝編纂委員会が設置されて以来、約二十年間の長きにわたって、信者の方々のみならず、広く一般の方々からも提供された数多くの資料が基礎となっているのであります。 

 この編集にあたりとくに意を注いだ点は、伝記物に見られがちなフィクションは避け、事実ありのままの明主様のお姿を紹介したいとの願いをもって、多くの資料にも一つ一つ正確を期して調査検討を重ね、事臭関係を明確にしながら執筆に努めたことであります。

 もとより、明主様のご事績のすべてにわたってお伝えすることは、未熟なるがゆえに遠く力の及ばぬところであり、ご不満もあろうと存じますが、その点お許しをいただきたいのであります。

 それにつけても、幸せでありましたことは、明主様が思想の大きな転機を迎えられた時期を含み、もっとも波乱に富んだ人生を送られた昭和の初期から、終戦を迎えるまでの間、短歌風に日記をつけられ、残しておいてくださったことであります。この日記のお蔭で資料の不足、不明部分が補われ、事実の確認、立証に役立たせていただくことができました。 

 また、生涯の大半を過ごされた東京はご承知のごとく、関東大震災、第二次世界大戦と二度の大災禍に遭遇したのでありますが、伝記の重要部分、とくに青少年時代の有様を裏付ける資料が奇蹟的に残存していたことはまことに有難いことでありました。

 さらに、委員会発足以来刊行にいたるまで、取材にご協力くださった方々は数えきれぬほどの多きにのぼりました。この間、思わぬ時に、思いもかけない方々から、まったく新しい事実を知らされたり、貴重な資料を提供していただくなど、明主様のご守護はもとより、目に見えぬ霊界で先達の方々がお働きになっておられるとしか考えられぬ事実を幾たびとなく体験させていただいたのであります。

 委員会が、ここ数年、倉卒の間に執筆、編集を終え、本書刊行の運びとなし得ましたのも、こうした霊界でお働きくださった先達の方々、また、今日、教団内外の各方面でご活躍されておられる諸賢、諸士の温かいご理解とご協力の賜物と存じます。ここに、感謝の祈りを捧げますとともに、衷心より御礼を申し上げるものであります。

 最後に、本書刊行を待ち望み、長年にわたり、教祖伝編纂委員会委員長として献身的奉仕をしてくださった、故森山実太郎先生、蒐集資料の整備に努力された、故箕浦二郎先生、さらに草稿作りに健筆を揮ってくださった麻生鋭先生をはじめ、本書編纂のために取り組まれた多くの先達に対し、満腔の敬意をもって、発刊を報告し、深甚なる謝意を表するものであります。

 昭和五十六年十二月二十三日
                   教祖伝編纂委員会