第二章 すべてのものが正しき時所位を得ること

 無量無辺の大慈悲に天魔羅刹<てんまらせつ>も服<まつろ>ひて諸悪邪法は改り夜叉龍神*2も解脱為*3し猪善仏神咸<しよぜんぶつしんことごと>く其志を遂ぐるなり山川草木尽<ことごと>く真神<みかみ>の威徳に靡<なびか>ひて禽獣虫
魚<きんじゆうちゆうぎよ>の未迄も悉其所を得ざる莫<な>し

   大意

 このようなありがたい世の中をつくってくださる真神様のはかり知れない大慈悲に、恐ろしい悪魔悪鬼も、己れの非に気づいて服従し、女の悪鬼龍神など、すべての邪神邪鬼も迷いからさめ、執着から離れてさとりをひらき、いろいろの悪いまちがった法律も改まって、かねて人びとを幸福にすることを念願し努力してきた正しい善良な神も仏も、みな本懐<ほんかい>を遂<と>げることができるのである。

 そればかりでなく、山川草木ばかりか禽獣虫魚の末端にいたるまで、すべてのものがそれぞれの時所位──正しい立場に立ち調和を保ちつつ繁栄することができるのである。
        
*1天魔羅刹<てんまらせつ>

 天魔は魔神とか魔王といい、人が善いことをしようとすると、これを邪魔して不幸に陥れる。羅刹は悪鬼羅刹といわれるごとく、鬼のような悪魔である。仏説では後に服従(まつろい)改心して仏教の守護神となり、十二天のひとつとし て甲胄をつけ、刀をもって自獅子に乗る像につくられているそうである。
        
*2夜叉龍神
 夜叉は羅刹と併称される暴虐な鬼のことをいう。明主様は、『女の執着によって悪くなった鬼』という意味で書かれたと仰せられている。龍神はこの場合悪龍を指している。いずれも執着のため悪魔となったものを指す仏語である。

*3解説
 迷苦を脱し、執着を去って道を覚えること。