いまの若い人はとかく理屈<りくつ>ぽくて、頭の中ですっかり組立<くみた>ててからでないと、仕事に取<とり>掛<か>かれないのであります。さて、取掛かってみると、理屈と現実とはあまりに違って、ことごとく思いどおりにいかず、すぐ失望<しつぼう>、落胆<らくたん>する傾向<けいこう>があります。これは現代の教育そのものにも多分に責任<せきにん>はありますが、どうも感心いたしません。
そこへいきますと、経験者<けいけんしゃ>は失望や落胆の経験を何度も経<へ>て、世間というものを知っており、現実と取組んだそのうえで理論<りろん>を組立てていきますから、同じ理論でも現実に即<そく>した理論であり、頭でデッチあげた理論とは違うのであります。信仰も同じで、実行者にはかなわないのであります。
青年は純粋<じゅんすい>という点で経験者に勝<まさ>っておりますが、行動の点では猪突猛進<ちょとつもうしん>のきらいがあります。また、経験者は実際的ではありますが、純粋さと行動の敏速<びんそく>さに欠<か>けるといった、それぞれの特長<とくちょう>があって一利一害<いちりいちがい>でありますが、これを互いに排斥<はいせき>したり悪口<わるくち>を言い合ったりせずに、一緒にして長所<ちょうしょ>を採<と>り、調和を計<はか>っていけば、よい仕事ができるというものであります。