初心の祈り

 なんと申しましても、現在は人間精神の向上をはかるということが、焦眉の急であります。難解の書物を漁り、思索するのも結構ですが、それらは一部の学者、学徒の方にまかせておきまして、私たちはまずなにをしなければならぬかを考えていかねばなりません。大衆は学問や理論ではけっして救われないのであります。ここに神のみ救いの具現として、明主さまを通していただいた浄霊ということが、なによりも大きな意義をもってくるわけであります。この浄霊こそは、まさに神を見せることであり、神を身近に感得さしていただけるみ救いの宝であって、これ以上のお恵みはないとすら思います。われわれはこういう有難い浄霊をいただいておるということを感謝し、またそれだけに重大な使命があるといぅことを自覚しなければならないのであります。それから、また、この浄霊によって神さまをわからしていただくということが神籍にはいる第一歩でありまして、そこからさらに向上の段階を、たゆみなき鍛練によって昇るわけであります。み教えによって導かれ、実行によって悟っていく、それ以外に向上の道といってはないのでありますが、とにかく一着手としてまず神の子として入籍するということが人間の根本でありまして、霊的放浪者の境涯にある人びとを、一人でも神籍に入れ、親神さまとのつながりをつけてあげるといぅことが、われわれに与えられた最初の仕事でなければならないと思います。

 そこで私どもは、祈りつつ、浄霊しつつ、倍加運動に挺身さしていただくということを、つねにモットーとして進みたいと思います。ことにぜひぜひ励行していただきたいことは、祈るということであります。これは私の経験にみましても、祈ることによって不思議なご加護をいただき、わざわいはすべて幸となっておることは、数うるにいとまないほど
であります。もし信仰者が祈りを忘れましたならば、いくら技術的に秀れておりましょうとも、経験に富んでおりましょうとも、それは歩む方向がちがうのでありまして惟神の大道からは離れていくものであります。信仰即祈りでありまして、信仰が古くなりますと、とかく自分では祈って行っておるつもりでも、いつか祈りの真剣さが薄れ、自分の知恵や力だけで動いているという場合が、多く見受けられるのであります。惟神ということは、神さままかせではなくて、天地自然の道を積極的に歩むということであります。なにをするにも神を念頭から離さず、人力のかぎりをつくしていくということであります。ですから、外面からみますと、甲の人も乙の人もおなじようなことをしておりますが、内面からみて心に祈りがあるかないか、神とのつながりがあるかいなかということで、その仕事の結果は天地の相違になってあらわれてくるのであります。

 それで誰にかぎらず、人間は正しい方向に向わせられてさえいれば、すぐによい結果が由われずとも、かならず先へいくほど結構にしていただけるにちがいないという確信を持つことが大切であります。目的と方向が惟神の道とちがっていれば、一時は栄えても先へいくにしたがって行詰るというのが天地の真理なのであります。

 それで、神さまに祈りつつ行うということが信者にはとくに大切な問題でないかと思います。〃初心に帰れ〃ということも、つまりは〃謙虚になって祈りの心を持て〃ということであります。経験のないものは、自分に対して不安でありますから、どうしてもより上の神さまを頼り、祈ってやらせていただくという素直な心境に立つんですが、慣れるにしたがって、初心の祈りがうすれ、形から見れば、たいそう巧みに進歩したようにみえますが、その実、内面的にみて堕落しているのが多いのであります。芸術家などは仕事に慣れるということを非常に警戒しまして、おなじものを作らせられることをいやがるものです。これはつねに初心を尊ぶからです。茶道においても、一期一会といって、ひとつの茶事を僻すにも、一世一代の心がけでやるというならわしがあります。なんべんやっても茶事は一世一代のものなのであります。われわれにしましても、浄霊をなんべんやらしていただい
ても、一世一代の気持でさせていただくという、この瑞々しい初心の心を失ってはいけ庵いと思います。事実世の中のことは、なにひとつおなじものは存在しないので、昨日と今日、さっきの自分といまの自分もおなじものではないのですから、万々一々新らしく、それに対する自分もまた初心でなければならないはずであります。これが惟神の心であります。

 それで私どもはつねに『初心に帰って、祈りつつ進ましていただく』ということをモットーにしていきたいと思います。さらに教団の和合団結がなにより大切で、この和合団結を乱そうとする霊の動きはどこにもあることでして、教団人がよりよい方向に進もうとするときは、かならずある種の抵抗を受けるものであります。それでお互に気をつけまして、不信の溝をつくらないことがいちばん大事だとぞんじます。

「地上天国 一〇四号」