世界の情勢はそれとして、救世教もだいぶ明るくなってきました。特に今年はいろいろな希望、楽しみが大いにあります。メシヤ会館と水晶殿も秋にはできますし、それから箱根の美術館もだいぶ充実してきたうえに、今年は近代名品展というのを六、七の二ヵ月やるつもりです。それから八、九、十を浮世絵展覧会にして、これは別館のほうでやるつもりです。それから本館のほうは桃山展を通してやるつもりです。近代名品展というのは、明治以後のいろんな美術品ですが、これはいままであまり世間に知られない物が多いのです。隠れていた物です。それでいままでは、多くお寺の物とか大名の物とかそういった古くからの物が名品となっていました。明治以後は、財閥とか成金といった民間人のほうに多く集まったのですが、それが終戦後どうしても出さざるを得なくて出てきた物ですから、あんまり人の目に触れてない物が多いのです。ですから案外人の注目をされるだろうと思ってます。それから浮世絵展覧会は、去年やったときの中途から後になかなか良い物が集まったのですが、それは出さなかったのです。あんまりみんな出してしまうと、来年のお楽しみがなくなってしまいますから、そういう物はとっておいて出さなかったわけです。それで今年は毎日新聞社が主催で浮世絵展覧会をやりたいというのです。ほうぼうから集めるのでなくて、箱根美術館のもののみです。適当な名称をつけるでしょうが、とにかく企画は毎日新聞社です。博物館なども手伝うでしょうが、そういうようで、三越の七階の大ホールで、元特別食堂になっていた所です。ちょうど一五〇坪ありますから、ずいぶん広いです。だいたい肉筆を主にしてやります。いままで浮世絵展覧会というと版画が主で、肉筆はほとんど出さなかったくらいですが、今度は肉筆専門ですから、これも初めての企画です。大いに人気を呼ぶだろうと思います。開催のときも、いろいろあったが、私はどこまで三月を主張して三月ということになったのです。二月は寒いし、四月はお花見にとられますから、三月が一番よいです。やっぱり、浮世絵というのは春が一番適当してます。寒風吹き荒<すさ>ぶときに浮世絵といっても感じが出ないです。そういうようで、とにかく大いに箱根美術館の宣伝にはなるわけです。よく聞いてみると、日本で一番集まっているのは箱根美術館だそうです。ですから日本一になったわけです。これがわずか一年もかからないくらいでした。日本で一番というくらいに集まったのですから、実に神様のスピード、早業……と言っては、どうも安ッポイ言い方ですが、とにかくその早さというのは驚くのです。
「『御教え集』三十号、岡田茂吉全集講話篇第十二巻p116~117」 昭和29年01月03日