昭和二十九年一月一日御講話(1)

去年の『栄光』の「正月号」には「世界夢物語」というのを書きました。あれはおもしろいことがあるのです。最初は「これからの世界」という題で書いたのですが、それから新聞に出そうというときに、ちょっと気に入らなかったのです。「夢物語」としなければいけない気がしたのです。それでさっそく「世界夢物語」と訂正したのです。そうしてあれは、スターリンが生きているとどうしてもアイゼンハウアーと衝突になるのです。そこであれを書いたのです。ところが神様のほうでは、とにかくそうでないことになったのです。つまり夢物語になったわけです。それで私は、その後スターリンが死んでから、ソ連は……共産主義はまるっきりガタガタになってしまうと言ったのです。ガタガタと言っても、滅びてしまうというのでなく、ずっと勢いがくじけるというわけです。やはりその後そういう具合に非常におとろえました。一つの、なんとなく世界中が脅かされているような不気味さがなくなってきたという、非常におとなしい、理屈の分かるような形になってきたのです。それでこれからますます平和攻勢という方針でやってゆくと思います。いま世界中がそういうわけで、一種の、明るいというまでにはゆかなくても、とにかくなにかしら心が柔らいだというような形になってきました。ただその代わり、軍備がずっと減ったから、日本なども、特需景気というものもずっと減ったわけで、それがために経済的のマイナスの影響もあり、だいぶ金詰まりとか、また今年の政府の消極経済……インフレをできるだけ押さえるというような方針になってきたために、この面だけは暗いほうですが、これも一時的の苦しみで、別に根本的の悪い意味ではないのです。ただ、こういう問題でも、結局去年の貿易尻<ぼうえきじり>が非常に悪いために日本の金が減って、ますます借金が多くなるという、貿易の不調が原因ですから、これを解決するのはなんでもないです。自然農法が普及されれば楽々と解決してしまいます。貿易尻の悪いという、つまり金が減るということは、なんと言っても食糧問題が一番深刻です。まだ政府で発表してないが、この米や麦を買う金はたいへんなものです。そこにもっていって肥料ですが、肥料のうちで、硫安を作る電力はたいへんだそうで、とにかく日本で硫安を作る電力を節約すれば、半分減ると言われてます。一番電力を使うのが硫安だそうですから、こういう面からの経済的の影響というものもたいへんなものです。だから日本の経済とかすべてそういうことを楽々と解決するのは自然栽培です。ですから今年はいっそう自然栽培に対して運動をやる必要があると思ってます。

「『御教え集』三十号、岡田茂吉全集講話篇第十二巻p99~100」 昭和29年01月01日