話は変わりますが、美術館の美術品がわずかの間にあんなに良い物がたくさん集まったということはみんな不思議に思ってます。浮世絵などは去年のいまごろはほとんどなかったのです。版画などは一つもなかったのです。それが一年たつかたたないうちに急に来てしまったのです。それでいまここにある浮世絵は、日本で一番だそうで、これだけ良い物が集まっている所はないそうです。だからとうてい人間業ではありません。ではどうして人間業でないように集まったかというと、無論霊的ですが、そのよい例が出たので、そのことを書いてみました。
(御論文「美術品蒐集の奇蹟」〔およびお蔭話〕朗読)〔「著述篇」補巻三、三三一-三三三頁〕
この中で「自分のような職人風情の者」と言ってますが、これはまったくそのとおりなのです。昔浮世絵を画く人は、美術家と職人との間ぐらいだったのです。つまり本当の絵師とは違うのです。ですから版画といって、木の板にああいった彫刻を彫師が彫るのですが、その元を絵師が画くのです。それも美人とか俳優とかを表現するのです。だからごく格の高いものではありません。それは山水や花鳥格の絵とは違います。ですから自分たちのような職人風情ということはよく合っているわけで、別に特に卑下しているのではありません。浮世絵師というのは、格が下がっているということを言っているのです。
「『御教え集』二十四号、岡田茂吉全集講話篇第十巻p」 昭和28年07月06日