教集20 昭和二十八年三月二十六日(5)

▽前節から続く▽

 その話はこのくらいにして、美術館についてちょっと話します。美術館は別館があらかたできて、ふつうは去年と同じに六月から開館するつもりだったのですが、箱根の旅館や電鉄のほうで、早くやってくれと頼むし、そのほかにもそういう要求をときどき耳にしますから、四月二一日から開館します。それでこの特筆すべきことは外国の古美術です。エジプト、ギリシア、ペルシア、インドなどの物がだいぶ集まったので、一室だけはそれを並べようと思ってます。こういう展覧会というのはいままで日本にはないのです。というのは、博物館は手を出さなかったのです。それでいまは後悔しているようです。前には帝室博物館というので、要するに宮内省の管轄でしたから、どこまでも日本的で、国粋主義が旺盛ですから、美術は日本に限るというので、あんまり外国のほうに目をつけなかったのです。そのために外国の古美術という物は日本人の目に触れる機会がなかったのです。また個人も手を触れなかったのです。ところが日本には割合にあるのです。それは不思議ですが、いろんな妙なことで、はいってきたようですが、またその古美術になかなか良い物があるのです。ところが不思議にも今年になってからドカドカはいってきたのです。それは神様がやられているのですが、そこで神様がやれということと思ったので、それを特別展覧会として陳列するわけです。そうして六月からは浮世絵展ですが、これもすっかり品物が集まって、私のほうにない分だけは博物館で貸してくれるそうです。この間博物館から来て、すっかり調べてくれました。そういうようにこの浮世絵展は、いままでに何回もありましたが、いままでにない傑出した展覧会になります。ですから外国のそういった鑑賞家も日本にそうとういますから、そういう人は非常に期待を持ってます。この間、英国大使館の参事官で、ブルームという米国人で、そのほうではたいへんな識者ですが、見たいと言って私のほうに来たので見せてやりましたが、非常に驚き、また褒めてました。そして自分が外国のそういった人に大いに宣伝するからと言って、自分は一週間に一回来て見せてもらうというようなことを言ってました。その人はいったんアメリカに帰って六月とかにまた出てくるというのです。この人は美術館について将来大いに働くのではないかと思ってます。そういうようで六月からの浮世絵展はそうとう評判になるだろうと思ってます。

△御講話おわり△

「『御教え集』二十号、岡田茂吉全集講話篇第十巻p123~125」 昭和28年03月26日