教集18 昭和二十八年一月一日(3)

▽前節から続く▽

 それから熱海のほうはみんな知っているでしょうが、いま基礎工事をやりつつありますから、来月か再来月あたりからいよいよ建築のほうに取りかかるという段取りになるかもしれません。それでいくら急いでも今年いっぱいはかかるだろうと思ってます。模型を造りましたが、最初の模型は気に入らないのでやり直したものが二、三日前からあそこに出てます。ただ塗りが間に合わないが、今日行ってみればできてます。とにかくだいたいの外郭はもう変更はしないつもりです。模型どおりに造るつもりです。最初の模型は柱が太かったので、それをもっと細くして数を多くしたのでずっと荘厳味が出ました。これはいつも言うとおりル・コルビュジェという人がやり始めたコルビュジェ式です。それを研究して造った図案です。ところがいままでコルビュジェ式というのは、官庁とかデパート、アパート、会社、ホテルといったような実用的なものにほとんど限られていたようなものです。最近のものではニューヨークの国際会館です。長方形のマッチ箱のようなものですが、それが代表的なものです。しかしこれは実用建築としては理想的といってもいいくらいにできたものです。しかし宗教的建築はぜんぜんありません。これは外国でも日本でもそうですが、どうも宗教的建築というと、古い物を模型にするという一つの型にはまっているようです。ですから東京でも築地の本願寺は鉄筋建築でずいぶん金をかけてよくできてますが、しかしあれもインドの寺院を模型としてます。

 それからあとは小さいものはほうぼうにできてますが、ほとんど昔からある神社形式と仏教の伽藍形式のようなもので、近代的感覚を表わしたものはぜんぜんありません。それで私はごく近代も近代で、これ以上新しいものはないというような考えで設計したのです。つまりコルビュジェ式を基本とした宗教建築で、これはぜんぜん夢にも思わない様式で、すくなくとも世界の建築界に向かって異彩を放つだろうと思ってます。それでこの春コルビュジェという人が日本に来るそうですから、この人に模型なども見せようと思ってます。また先方も見たがるでしょう。この人はだいぶ長く日本にいる予定だそうです。しかも建築する場所が都会などと違って、ああいう風景をとりいれての新しい宗教建築を造ったというので、全体的に一つの芸術品です。これこそ天然の美と人工の美をタイアップさせた本当に新しい試みといいますか、世界的の新しい試みという意味のものです。ですから大いに楽しみだと思ってます。それとともに展望台にガラスの家も造りますが、これはだいたい会館と一緒くらいになるだろうと思ってます。これも世界にないものです。それはアメリカあたりでそうとうの山の上の小高い所にガラスの家というのがあります。そういう展望台式のものを写真で見ましたが、私のほうのとはぜんぜん違います。そういった意味においても、おそらく世界にないと思ってます。そうしてだんだんに周囲の庭園も完成していきますから、とにかく人々の目を引き、注目をあびるということになるでしょう。

▽次節に続く▽

「『御教え集』十八号、岡田茂吉全集講話篇第九巻p320~321」 昭和28年01月01日