〔 質問者 〕博物館では一日平均五〇〇人で、一人一〇円、団体が五円で、いま一八〇人使っているので、人件費だけでもたいへんだそうです。
【 明主様 】そうでしょう。どうしても政府で予算を増やさなければ駄目です。美術品の買入費というのは、つい去年あたりまでは、二〇〇〇万円でした。いまは増額したでしょうが、知れたものです。いま文化財保護委員会のほうの所属になってますから……委員会のほうは予算も一億以上あります。その代わり、いろんなことがあるんです。国宝保存がありますから。
〔 質問者 〕古城とか。
【 明主様 】そうです。古い寺だとか……一億円くらいじゃしようがないです。
〔 質問者 〕会長はだれでしょうか。
【 明主様 】会長は高橋誠一郎じゃないですか。この間来たのが総務部長です。だからこういう美術館というのは、文化財保護委員会でこしらえなければならないものです。だから、これができたということは、国家が非常に喜ぶんです。
〔 質問者 〕昨日来た有志連中も、こういったものがあっても良いと考えていたらしいので。
【 明主様 】そうでしょうね。あって良いどころの騒ぎではなく、なくてはならないんです。なにしろ日本美術の紹介機関というのがないんです。それと位置が変な所にあっては嫌です。外客は来ないです。箱根はその点は良いです。
〔 質問者 〕明主様に鑑識はないと思っていたので、見てすっかり驚いて、美術学校を出たのか、どういう造詣があるかというので、私は霊感だと言っておきました。
【 明主様 】それは良いです。
〔 質問者 〕絵なら絵を掛けて、嫌な気がすると買わずに返す。すると後で、それは贋物だったということが分かる、と説明するよりしかたがありませんので。
【 明主様 】それが本当だからね。まったく贋物だけはないです。
〔 質問者 〕何十年も前から研究していたように思うんです。たいていは良くても三分の二は贋物だそうで。
【 明主様 】そうです。
〔 質問者 〕白鶴でも、初めはずいぶん取り替え、取り替えで、いかさまがあったそうですから。
【 明主様 】そうです。三〇代から九〇まででしょう。本物が分かってきたのは二〇年くらい前です。それまでに一〇〇〇万円月謝を払ったそうです。
〔 質問者 〕塩原さんもだいぶ売ってますが、半分は贋物だったそうです。
【 明主様 】贋物だったらしようがないんです。一〇品見て一品買えば良いほうです。気の毒になりますよ。五、六点くらい、小僧に持たせたり自分が持ったりして、ここに汗かいて上がってきて、一品も買わないでしょう。その代わり、これはという物は、ほとんど言い値で買ってやるんです。それで結局買い損ないがないんです。高くても時が経つと安いんです。その代わり良い物……これはというのがあると、一番先に私の所に持ってくる。値切らないからね。値切るところは一番後です。小林一三は三番目という綽名になっている。私の所に一番に来て、二番目が五島慶太、三番目が小林一三です。
〔 質問者 〕五島慶太にはだいぶ良い物がありますので。
【 明主様 】だいぶということはないが……揃っているのは、ほとんどお経です。あと光悦物があるが、他の物は形無しです。去年の大師会のとき……大師会というのは、ほうぼうに席がありますが、東京の席で五島の物を出しましたが、一番の呼び物は徽宗皇帝の鴨の絵です。私の所に持ってきて、私がはねつけたもので、贋物なんです。私はその場では言いませんが、あとであれは駄目だ、本物でないと言ったら、聞いた人が「へえ」と言っていました。昨日か一昨日か来ましたが「明主様がいつかおっしゃいましたが、このごろ怪しいという話になってます」と言っていた。
〔 質問者 〕ここの徽宗皇帝は、浅野さんから出たので。
【 明主様 】そうです。あれは本物です。
〔 質問者 〕雪舟のは、みんな珍しいと言ってました。
【 明主様 】珍しいです。雪舟の物で、もっと立派な物がありますが、本当に雪舟の良さというのは、あれです。特色が表われている。あのくらいの雪舟はないです。それから啓書記の松が大きく画いてある、あれも良い物です。啓書記、周文を本当に見る人も少ないです。まだ啓書記のすばらしい物がありますが、出すだけの余地がないですからね。