〔 質問者 〕このごろ個展もはやりますので。
【 明主様 】はやりますよ。ずいぶん入場者があるだろうと思うが、この収入がたいへんなものです。私はなんでも算盤を取る。それでときどき催しをやってね……琳派展とかね。そういうときには私がなにしますがね。これは非常にいいと思いますよ。美術を奨励する意味においてね。なんといっても銀座ですよ……多くの人に見せるのはね。実際上野なんかではしようがないですよ。わざわざ行くのはたいへんですからね。個展なんか上野でやっても、見に行く人はありませんよ。そのときの美術館は、これは一番目につきますから、うんと変わったやつにしようと思っている。
〔 質問者 〕敷地はずいぶんいたしますので。
【 明主様 】けれども、もうこっちの……私の権利じゃないが、権利を持っている人を押さえてますからね。アメリカの美術館の事情なんかも良く知った人です。いろんな写真を持ってきたしね。
〔 質問者 〕やっぱりフランスでございましょうか。
【 明主様 】やっぱり英国ですね。世界一のはね。ヨーロッパのはフランスに集まっているんですが、世界的に言えば、やっぱりロンドンですよ。それは割合古くから集めてますからね。アメリカのは新しいからね。やっぱり、しっかりしたのは英国ですね。
〔 質問者 〕イタリアはだいぶ分散したそうで。
【 明主様 】そうですが、やっぱり美術のほうはさかんですね。そうとう画家の偉いのができてますね。いま上野でやってます。行ってみようと思ってますがね。まあ、絵ではいまはフランスですね。だけども私は、油絵は絵と思っていないんですよ。絵と美術工芸品の間のものです。
〔 質問者 〕しかし、油絵も日本化したものがございます。
【 明主様 】油絵が日本化し、日本画が西洋化した。これでいいんですよ。両方で行ってね。どうも油絵というやつは、おもしろくないですよ。古い印象派時代の……ルネッサンスですが、あれはまた、彩色した写真みたいなものです。それから現代の油絵ときたら、精神病の展覧会みたいで……精神病の展覧会をやれば、きっと、ああいうものになる。第一、他人が見ても解らないようなものだからね。だから油絵はしようがないですね。やっぱり絵は東洋画ですね。ここの美術館は絵画に一番力を入れましたからね。絵画の良いものは一番よけい出ますからね。これだけは……日本の絵画の良いものは、外国には絶対ないですからね。現代の画家なんかは、見ようと思っても見る機関がないですから、そこでそういう人たちが頭を養うに非常に良いと思うんです。本当に良いものは……いまのそうとうの大家は別ですが、中から下の画家では見たことがないでしょう。ふつうの人は勿論そうですがね。だから美術館はそういう人たちの教育機関として、非常に効果があります。
〔 質問者 〕橋本関雪のは。
【 明主様 】見に行きましたよ。けれども高いことを言っているのでね。話にならないです。ですから一つも買わないです。
〔 質問者 〕良いのがございましたので。
【 明主様 】少しはあります。四、五点ありますね。ああいうのは相場を知らないでしょう。だから高くさえあればいいと思って、つまりそういうものは……古い良いものはいくら高くても売れるというような、おかしな錯覚になっちゃうんです。そういうのはたくさんあります。まるで、今戸焼の泥人形みたいなものが一〇〇万円とか、絵なんかも二〇〇万円だとか三〇〇万円だとか……素人はしようがないです。だからいつも言うんですが、つまりメシヤ教の教祖といったら、金がうんとあって、赤ん坊みたいなものだというように言っている。人を馬鹿にしている。この間ももらってもしようがないようなものを、それを五〇〇万円という。そういうのがたくさんありますね。月に一人や二人はきっとあります。こっちに来る少し前に熱海で、一人の信者の人が紹介したんですが、その人は、たいへん大事にしている曼陀羅ですね。掛物の大きいのね。曼陀羅を写したものなんです。刺繍みたいにね。そういうものをもらってもしようがないですね。汚い変な物でね。それから支那の六朝仏といって持ってきたが、支那の割合に新しい……乾隆のものですね。真鍮みたいにピカピカ光った、坊主の像みたいなものですね。曼陀羅なんか人に譲るというのはもったいないと、先でお祭りかなにかして、京都から東京に持ってくるのに、割れたり損じたりしたらいけないというので、自動車で来た。ところがこれと思うのは一つもないんですよ。もらってもしようがない。それでガッカリして、なんでも一つもらってくれという。寄付をするというんです。ところがもらうものがないんですが、花生けがあったんです。あれなら無事なものだからと、それでももらっておきなさいと、もらっておいたんです。それに似たようなことがよくあります。以前川崎のほうから来たので、掛物だとか道具だとか五、六十点ありましたが、川崎では一番豪の者なんです。番頭かなにかで三人で来ましたが、見ると一つもないんです。夜店の物のみですね。本当のことを言ったらガッカリするだろうと思いましたね。三代前の先祖が集めたのをとってある……家の宝にしていたんですね。 恭しくしてたいへんなものです。光琳が一つありましたが、贋の物なんです。 本当のことを言ったら失望するだろうと……それを言うのがつらいですから、私は言わないんです。とにかく私の趣味と違うから……まあ、道具屋に見せなさい。道具屋に見せれば、道具屋におどされますからね。そのほうがいいからと言って帰しましたがね。実にかわいそうなものですね。ああいうものは、本当のものはない。めったにないですからね。良いものがあっても、これはというものは百に一つですね。道具屋が大自慢で持ってきて……七、八つ持ってきて、一つあるかないかですね。そういうときには私はしようがないから、一つ預かっておくんです。そうするとその次に、なにか買うようなものを持ってきますから、持ってきたときにそれを返すようにする。それから、返すつもりでいると、たくさん持ってきて買わないでしょう。それで返すつもりでいても、返さないで……そういうこともよくあります。だからとにかく美術館に出るものは、一つといえども……どんなものでも、とにかくどこか値打ちのある所があるんです。