〔 質問者 〕そうとうのものがありますが、本当に見たいというのは。
【 明主様 】あそこで有名なのは赤不動ですね。赤不動は天下に有名なものですね。他には。
〔 質問者 〕あそこの美術館には出さずに、お寺に持っておりまして。
【 明主様 】あそこは秘蔵ですよ。ああいう所には巨勢金岡の観音様がありますがね。恵心僧都の画いたのもありますね。仏画というものは安いものなんですよ。びっくりするほど安い。曼陀羅ですね。ずいぶん細かに仏様が画いてありますが、こんな大きいのが、前に五、六万くらいだったんです。いまはずっと高くなったですがね。私はその時分にチョイチョイ買いましたがね。なぜかというと、あんまり安いから買った。もったいないようでね。手間がもったいないからね。
〔 質問者 〕金剛界と胎蔵界の。
【 明主様 】曼陀羅というのは二つのものです。曼陀羅でも、一番良いのは藤原時代のものですが、これはないんです。たいてい鎌倉時代のものですね。
〔 質問者 〕京都はたいていご覧になられましたので、もうお楽しみは。
【 明主様 】仏像は法隆寺を見ればね。
〔 質問者 〕石山寺に弘法大師の軸が。
【 明主様 】怪しいですね。ああいったもので一番集めているのは小泉三申……あの人です。あの人は玉石混淆ですが、中には良いものがあります。
〔 質問者 〕金光庸夫は。
【 明主様 】いくらもないです。新円になる前に金光が何千万円か持っていたんです。一〇〇〇万円か二〇〇〇万円を現金で持っていた。それで小林一三に、現金持っていると危ないぞと言われて、物に換えちゃえ。骨董なら俺がちょっと……目がきくほうじゃないが……小林が買わしたんです。もっともその時分には、戦後間もなくで、良いものが安かった。それを買わした。それを持っているんです。
〔 質問者 〕もし良いものがありましたら。
【 明主様 】因果経があります。ところが先生、五万円が一文負かっても売らないといばっているんです。久迩宮さんは四万円です。まだ仁清の壷が金光にありますから、それを私は一遍見たいと思ってます。いまそんなものですよ。あとは知れたものですね。好きで買ったのではないからね。満州タバコで儲けたその金があったんです。東京では、なんと言っても益田孝が一番持っていたです。まだ良いものがそうとうありますよ。始終売ってます。終戦前からボツボツ売ってましたよ。あそこは良いものがありますよ。それは敬服しますね。益田孝というのは、そっちの世界でも第一人者でしょうね。昭和の不昧公ですよ。東京では益田さんで、大阪では鴻池です。
〔 質問者 〕やっぱり売っているので。
【 明主様 】それは、何年も前から骨董売って食っているんです。なにしろ生活費が一カ月五〇万円で、それを売っていて平気なものです。まだ倉に……そうですね、五つの倉くらいあるでしょう。
〔 質問者 〕明智光春の湖水渡りをしたときの茶釜があるそうです。
【 明主様 】そういった名品はなんでもありますよ。よくも集めたものですね。
〔 質問者 〕趣味はないそうで、ある人に菓子入れのすばらしいのを出したので喜んでおりましたら、それは台所に置いているそうです。
【 明主様 】そうですか。まあ、良いものは鴻池でしょう。あの時分に金貸しをしていたんですからね。大名に、品物を抵当に
して金を貸していた。その流れですからね。住友は銅器くらいなものです。銅器は別子銅山なんかやっていたから、その縁で持ってます。
〔 質問者 〕細川護立候は。
【 明主様 】持ってます。しかし、たんとはないです。先生は目がきいてますからね。なかなかオーソリティです。ごく良いものだけは取ってありますが、売りましたね。細川護立候のもので欲しいものが二、三あるんです。浅野候にもあります。浅野はだいたい宋元時代の絵ですね。他には、これはというのはないですね。
〔 質問者 〕護立さんが持っている。
【 明主様 】しかし護立さんも、持っているのは判ってますね。たんとはないです。護立さんのでこれはというのは五、六点でしょう。浅野さんには支那のが二、三十点でしょう。そんなものでしょう。ところが益田さんや鴻池さんというのは、あらゆる方面にわたっている。だから道具屋仲間で、出るというと、今度はなにが出るか見当がつかない。
〔 質問者 〕一時危篤で。