(前節から続く)
で、現在の世界の情勢も、だいたい知っておかなければならないですけれども、なかなかソ連のほうは、深い。そこから見るとアメリカのほうが、なんと言うか、浅いと言うんでなく、善人的ですね。片っ方は悪人的ですから、食えないですね。だから、朝鮮の休戦問題にしろ、彼らも時を稼いでいるんですから、いい加減に、まとまらないように引き延ばしているんですね。ところが、アメリカのほうは、善人ですから……アメリカの有名な人が、一二月二七日までに必ず、条約が結べるというようなことを言いましたが、あれらを見ても、講和になると思っているんです。ところがソ連のほうは、そんな生やさしいことじゃないんです。どこまでも延ばして……第一、休戦になるとすると、両方で軍隊を引き上げるということになりますね。引き上げちゃ、なんにもならないんですよ。連合軍の軍隊を、あそこに引き止めて消耗させようというんですからね。先から言う通り、消耗戦術なんですからね。朝鮮だって、一つの消耗の一部として、どこまでもグズグズしているわけなんですね。ドンドンやっちゃ、いまのところ武器の点においても、アメリカにかなわない。そこで中共もやってみたが、さんざんやられて、どうしても勝てそうもないし、非常に損害も多いですから、そんなことじゃたまらんというわけで、蛇の生殺しにしようと……そうしているんですからね。いまは、だいぶアメリカが気がついてきたんですが、しばらくの間はアメリカも乗っかっちゃったんですね。そうしておいて、いま中央アジアに事を起そうとして、しきりに準備してますね。あれも一つの消耗戦術の一つなんです。ヨーロッパ……それからユーゴーですね。チトー政権もやるでしょう。イラン、イラクですね。イランの石油問題なんかも、ごく奥のほうには共産党の線を引いているんですよ。で、結局英国を苦しめるというと、結局間接的には米国を弱らせることになりますからね。そんなわけで、当分いま言ったアメリカを弱らせるという計画のもとに、グズグズ……世界中をつつくわけなんですね。一番おもしろいのは、スターリンが元日に、日本にたいへん好意を持ったメッセージを出しましたが、あれは魂胆があるんです。どこが魂胆かと言うと、日本はこれから軍備をしようというんです。再軍備を緩和させようという狙いなんですよ。この間のうちから、大山郁夫に対して、平和賞をよこしたり、しきりにこのごろ、日本に好意を持っている。そうして、まるで以前と打って変わった態度を見せてますが、あれは本当に日本を助けるというような、そんなような意味はないんです。つまり、日本の再軍備をできるだけ緩和して、アメリカに接近しないように、少しでもそれを減らす……ぜひ再軍備するとなると、アメリカの援助ですからね。そこで、ソ連のほうが恐い目をしていると、日本も……一生懸命軍備しなければならない。そいつを、ニコニコ顔だと、日本もそうとう油断しますからね。そういうところを狙っている。ただそれだけのもので、別になんにも、腹の中は良いんじゃないですからね。それは、日本でも解っているでしょうから、それに乗るようなことはないでしょうが、この間うまいことを言った人がある。いくら口でうまいことを言っても、日本の捕虜三〇万人から、まだ帰らない。これはどうしてくれる。まず、それから解決してくれなければ駄目だ。と言ってますが、あれはうまい……急所を言ったと思ってますがね。