で、そのうちの一つは、美術館ですけれどもね。美術館は大晦日の日に行ってみたが、思ったより立派にできました。堂々たるものですね。建物からいっても、おそらく日本一でしょう。中身も日本一にするつもりですがね。そんなわけで、あれができると、まず社会の注目を大いに引くだろうと思います。で、中に陳列する物も、いろんな……私が準備した物だとか、信者さんが献納した物だとか……それからまた、高級……優等の逸品物ですね。そういう物は、財閥とか旧大名ですね……そういう所になかなか立派な物があるので、そういうのは、先方でなかなか売らないですけれども、金に困っているんです。あそこの家じゃ、あれを売るようではもう駄目だ。という信用ですね……そういう点もあるし、税務署がおっかないしというわけで、なかなか手離すことができない。そうかといって、金には苦しんでいる。そこで私は考えて、ある程度のお礼をして、それを借りるというような意味を話すと、だいぶそれで……先方は喜んで応じる風があるんですよ。ですから、その点において非常に、ふつう見られないような物を出品できると思ってます。それから後は、古い仏教美術のような物ですね。これは京都、奈良あたりのお寺は、みんな財政に苦しんでますから、これはほとんどいばって……借用料を出して借りることができるんですから……こういう物の良い物が出るだろうと思ってます。建物と中身と、日本一は充分間違いないですね。それから、ある点においては、世界一かもしれないですね。というのは、アメリカあたりなんかが……この間のサンフランシスコであった展覧会で、非常に刺激されて、ぜひ今年……二七年にやってもらいたいと言う……最近申し込んできましたがね。ロックフェラー財団ですかね、日本も大乗り気になっていま準備しているようです。今度はサンフランシスコのときと違って、もっとずっと良い物を出す予定らしいです。サンフランシスコのときは良い物を出さなかったですね。あのとき話しましたが、進駐軍の注意があって、あのときフィリピンがやかましかったので、あのときにダレスさんなんかが、いま日本は賠償はできない。だから他のことで、賠償をするようにしなければいけない……そういった話があったので、フィリピンは、金銭以外とすれば、美術品でも良いというので、押さえられるようなことがあったので、最初の予定と違って、一段落ちた……そういう物を出したんです。この間、その展覧会を見ましたが、なるほどそういうようになってます。一級品を避けている。ところが今度は、そういう心配がないので、一級品を出す様子ですがね。そういうようで、日本美術に関心を持ってくる傾向なんです。ヨーロッパあたりでもそうですがね。日本の古美術の権威として、矢代という人があるんです……この人は今度ヨーロッパに招ばれて英国、フランス、イタリアと……日本美術の講義をしてこようというので、もうじき出発するようです。そんなようなわけでアメリカ、ヨーロッパの人たちが、非常に日本美術に関心を持ってきた。ですから、今度箱根に造る美術館も、外人の方に知らせたら非常に観に来るだろうと思ってます。だいたい日本美術を主にして、支那美術を付録くらいにしてます。支那美術のほうはアメリカ、ヨーロッパでも集めてありますから……支那美術は、それより以上には、こっちはできません。日本美術は、先方に……本物はないですね。ほとんど贋物ですね。本物はごくわずかしかないです。そんなわけで、箱根の美術館だけでも、世界的といかなくても、そうとう注目を引きますね。いずれ熱海に建てるのは、世界一というのを目標にしてます。それは、たいへんなものですが、いまの箱根ですね……箱根だけでも、そうとう注目を引かせるようになると思います。
「『御教え集』六号,講話篇第六巻p357~」 昭和27年01月03日