御教え
正月だけは、原稿なしにして話だけにしようと思って、昨日も一昨日も、別に決まらない話で、思いついたままを話しました。今日も思いついたままのお話をしようと思ってます。なんだか今年のお正月は明るいほどにはいかなくても、なにかのんびりしたような気分が……国民一般もしているようで、もっとも去年の正月なんかは、朝鮮問題が酣《たけなわ》なんで、それらのために、非常になにか不気味な感じがしてましたがね。今年は、あの問題がだいぶ緩和されたんで、それで、なにかゆったりしたような気分がするわけですね。ところが朝鮮問題も、実に……決まりがつきそうになると、また駄目になっちゃったり……見物人としたら、非常にじれったいように思うんですが、あれは共産軍……中共ですね……中共の計画であるし、その奥にはソ連が糸を引いているというわけで、講和にしてはいけないんです。だいたい、休戦の話がこんなに長引くというのは、おそらくいままでに例がなかっただろうと思いますね。で、アメリカのほうで……休戦になったらとか、停戦になって軍隊を引き上げるとか、いろんなことを言ってますが、つまり軍隊をアメリカのほうで引き上げてはまずいんですよ。つまり、共産軍のほうは、その根本が、アメリカに対する消耗戦術ですからね。軍隊をいつまでも駐屯しておけば、それだけの漠大な費用を使わなければならないから ……引き上げては、そういう意味がなくなりますから、できるだけ引き止めておかなければならない。といって、戦争をやるとすると、いまのところアメリカの優秀な武器のために、非常に損害が多いですから、闘うのは損だし、決まりをつけて軍隊を引き上げては、なんにもならないというんで、巧妙に引き止め戦術をやっているわけですね。このごろアメリカのほうでも気がついてきたようですが、最初はアメリカのほうも、とにかく全面的に講和にならないまでも、ある程度戦争を終結させられるという考えがあったらしいですね。だからアメリカの有名な人で、一二月二七日までには、必ず、約束ができるというようなことを断言してましたが、なかなかそんなわけにいかないんで、いまもってグズグズしてますからね。そんなわけで、根本はアメリカを弱らせるという目的なんですからして、そういうふうに考えると、だいたい解ると思うんです。次に東南アジアですね……あの辺がだいぶ両方で戦備をしているようですが、もう少し経つと、必ずまた衝突が起るでしょう。それに対してアメリカがフランスを非常に援助してますからね。ですから、これもグズグズしていると、戦争が起るでしょう。それから、いまヨーロッパで一番恐がっているのはユーゴーですね。ユーゴーのチトー政権ですね。あれをスターリンは非常に憎んでいるんですからね。どうしてもチトーをやっつけなければならない。しかしまだソ連の軍備が充実してないから、ソ連のほうで痛し痒しですね。よほど前からそういう状態であったんですが、いまヨーロッパの形勢は、今年はチトーをやるだろう、というような説が非常にあるようですから、そうとう危険と見なければならないですね。それからあとは、ドイツですね。西と東ですね。これが、もし大戦争が始まるとすれば、東ドイツですね……あれが発火点になるだろうという観測がありますが、とにかく東西ドイツの問題もなかなか難しいらしいですね。下手すると、朝鮮の南北の争いみたいにならないとは限らないというわけで、早晩とにかく無事にはすまないですね。なにかゴタゴタが起るだろうと……そんなような具合ですが、根本というのは、やはりアメリカを弱らせる……できるだけ消耗させるというソ連の計画です。それが、とにかくソ連の思う通りに行きつつあるんですね。