御教え
お正月ですから、今日は話だけにしようと思います。今年は去年と違って、なんだか穏やかな……あんまり心配になるようなことがないような気分がするようです。まあ……だれも、そういうような感じがするようですけれども、第一そういう気分がするということは……時局のためです。朝鮮問題がだいぶ穏やか……と言うか、だいぶねぼけてきたようです。ところが、元日にスターリンが突如として、日本にたいへん友誼的といったようなメッセージ をよこしたのですがね。ちょっと不思議に思いますけれども、良く考えてみると、別に不思議はないんですよ。というのは、スターリン先生も、考えたんですね。どうも、いままでのような相手を刺激するような極端なやり方は、どうもまずい。仕事がやり悪いから、今度は方針を変えてやろうというような考えだろうと思うんです。いままで、相手を怖がらせるような……恐怖外交と言いますかね……外交というより、恐怖政策と言いますかね……そういうようなことを大いにやったんですが、ある程度はそれでうまくいった点もあるんですが、それがためにほうぼうから嫌われ者になって、怖がって従うくらいなもので、どうもおもしろくないというわけですね。それで、急に変えるわけにもいかないからして、ぼつぼつそういうような、懐柔的な……そういった外交を取るんじゃないかと……こう思われるんです。それで、朝鮮問題ですが、あれも別に、平和の考えなんて、ぜんぜんないんですね。ただ、アメリカのほうの攻撃が……武器が優秀で、非常に損害が大きいんですよ、あのままやったら、とんでもないことになる。早く攻撃の矛先を鈍らせなければならないというんで、休戦問題というのは起ったんです。あれで、講和になるというんじゃ、おもしろくない。ただ、引っ張るわけですね。だから、徹頭徹尾引っ張り政策です。そうしているうちに、内容を充実して、ソ連のほうでも軍備をできるだけ充実させて、連合国のほうに隙があれば、猛然とやろうという考えに違いない。だいたい、共産主義というのは、闘わないのが主義なんですから……ぜんぜん闘わないわけではなくて、できるだけ闘いは避けて、結核のようなもので、だんだん相手に滲み込んで、蝕むようにして敵を弱らせようというのが、建前なんです。そこで、スターリンの大方針としては、アメリカの力を弱らせるという、これなんです。だから、朝鮮問題が解決すると、軍隊を引き上げて……アメリカのほうは軍隊を弱らせることはないから、それではいけない。だからすっかり協約ができて、軍隊を引き上げるということは、中共のほうはやらないだろうと思いますね。なんかかんか、そうとうまだ、アメリカの……対中共的の軍隊を駐屯して防禦をやる。いつ攻撃しても……されても良いような……そういう体勢をやる。すると、アメリカもそのために、いろんな費用ですね……それからまた、日本に対する援助とかで、そうとう金を使わなければならない。いろんな準備をしなければならないということであるし、それからいま中央アジアですね。あの辺なんかも、だいぶ今年は、そうとうモジャモジャが起りそうなような形勢がありますね。結局フランスあたりを、アメリカが援助する……こういうこともアメリカの負担になりますからね。それからイラン、イラク、エジプト……ああいう方面も英国に直接心配をさせているんです。ところでそんなこんなで、英国も非常に金がいるんですね。とうてい英国の財政が追っつかないので、チャーチルが出掛けることになりましたがね。トルーマンに会って、結局金の問題なんです。追っつかないから金を借してくれということなんです。結局金の問題なんです。それから、ヨーロッパのほうでも、ヨーロッパ統一軍ですね。それから、今年の見込みではユーゴーですね。チトー政権ですね。あれを、どうしても、ソ連が軍を進めて、チトー打倒の戦争を起すだろうという、もっぱらのヨーロッパ方面の見方ですがね。それと、もう一つはドイツですね。西と東の……あれもなかなか……ドイツ統一のような……ドイツの国民はしきりにやってますが、そう容易にいくものでなくて、東のドイツですね……あれをそうとうソ連が操ってますから、これもいつ面倒なことが起るか分からないので、それを怖れて、フランスなんか、戦備に汲々たる有様です。そういうことが結局アメリカの負担になってくる。あっちつつき、こっちつつき……で、アメリカの消耗ですね。そういう方策を取るに違いないです。だから、今年はそんなような……アメリカの力を弱らせるという……いろいろな計画でやる。と、こう見て間違いないと思いますね。今年は、平和にもならず戦争にもならぬ、という中途半端……そんなように推移していくんだろうと思います。
日本も再軍備とか、いろんなことを言ってますが、これもどうせ、ソ連のほうで平和ということにはしっこないんですから、結局いま言ったようなグズグズ的ですね。そういうふうにやっていくでしょうから、日本の再軍備なんかも、警察予備隊ですね……あれを増やすというのは、武器をそうとう貯えるというくらいなところだろうと思いますね。まあ、警察予備隊がいま七万五〇〇〇ですが、あれを倍くらいにするんじゃないかと思います。一五万くらいにね。大いにやったら、日本の財政が負担できないですから、追っつくくらいとすれば、せめて倍くらいですね。倍といっても、今年のうちにはできないですから、チビチビやって、来年くらいには、やっと倍になるくらいなところでしょう。そんなような具合でいくんです。