これは算盤については、以前に書いたことがありますが、もう一遍書いてみようと思って書いたんですが、どうも……信者ばかりでなく、日本人は算盤と能率ですね……これが、いかにも気がつかない点があるんですね。だから非常に無駄なことが多いんです。この間……四、五日前、私が山に行ったんですが、鉱山ですね。これは、群馬県の水上温泉の側です。それで、実地に坑道やなにか見たんですが、こういうことに対しても、急所をはずれているんですよ。要するに、急所をはずれているということは、算盤にはずれているということです。例えてみれば、山なら山全体を調べてみて、やっぱり急所があるんです。例えてみれば、一番鉱物がある所、その次にある所、その次にある所と。行ってみると、二と三を一生懸命やっている。一というのを後まわしにしている。こういうことは、なんにでもあるね。いつも言う通り、浄霊でも急所があるから、そこを見破らなければならない。ということと同じで、私が行って今度すっかり……急所をやるように言いつけもしたけれども、やっぱり……しきりにあっちに行きたかったのは、神様が行かなければならないというわけでやられたんですが、そういうような具合で、算盤ですね。そうすると能率も上がるんですよ。無駄がないからね。なにごとをやるのも、急所を見つけるということは、結局……大局から見るんですね。大乗ですね。これは、また違った話ですが。先に株の相場をずいぶんやったことがある……若い時分にね。そのとき、こういうことを言う。相場が上がる……下がると言うが、一番間違いないのは大局から見るんです。ところが、目先といって、目の前のことに捉われるんです。もうじき上がるとか、もうじき下がるとか……なるほど、目先ということがあるにはあるが、結局は、はずれてしまう。すべて大局から見ていくと、正確な判断がつくんですね。メシヤ教なんか、今日はだいぶ大きくなってきましたが、小さいうちから、大局で……世界人類を救うという、これほど大きいことはないんですからね。目標をそこに置いてますからね。だから間違いなく進んでいくんですね。ところがたいていな人は、大局を忘れて……どうも……部分的に捉われるんですよ。それは、ちょっと良いようでも……結局においてうまくいかないんですね。よく、大乗と小乗という……さっきも読みましたがね。やっぱり大乗ですね。大乗でいくんですね。それを始終注意していると、楽にうまくいくんです。私なんか、仕事するんでも始終そうですね。いま、いずれが一番早くやるべきことかと、いずれを一番主にして、力を入れるべきことかと、始終考えて、それだけをやっていくんです。そうするとそれだけで小さいことも、よく自然に解決することもあるんですよ。
(御論文「算盤と能率」朗読)〔「著述篇」第九巻六二七-六二九頁〕
で、こういうことについて、一番思っているのは、ときどき裁判所に行きますが、おそらく……能率の上がらないのは日本一だと思いますね。あるいは、世界一だろうね。なにしろ、始まりが一〇時半と言っているが、ところが一〇時半に始まることがない。まず一一時ですね。でも、ふつうは一一時半になることもある。一〇時半に始めようとすればできる。そうすると、一〇時半に始めると、午前中に二人くらい調べられる。一一時半となると、一人の証人で一二時半にまでかかるから、二人の証人ではできないことになる。証人を三人呼び出すと、二人はできるが一人は午後になる。証人というのは、犯罪者ではないから、一度ですましてもらいたいですよ。一日がかりですからね。一日無駄されるというのは、実に……人民を思わざるもはなはだしいですね。そうして、調べ方も実に気の長いものですよ。裁判は……牛車に乗っているような……『源氏物語』時代……だからまったく、あそこに行くと、おかしいですよ。いまは『源氏物語』ははやっているから良いが……そうして、いろんなことは、弁護人が証人から聞いたりするが、これが、また、実に無駄なことなんです。事件に関係のあるものはない。見ていて、一〇のうちに一つか二つでしょう。あとは雑談に近いものです。なんとなれば関係のないことを言ったり、聞いたりしているんですからね。この間……名前は言いませんが、幹部の人で証人になった人がある。弁護人が反対訊問で……こっち側の証人ですからね。こっち側が聞いて、しゃべるんですが、たまには検事が言う。ところが弁護人が質問するのも急所に触れてない。休憩があったから「あなた、急所はここだ。ここだけ言ってやれば良いんだ」と言ってやったので、残りの答弁のときに、私の言った通り言ったから、それで良かったんですが、そんなような具合で、だいたいいまの日本人くらい……なんというか……まあ、頭が悪いんですね。実に頭が悪いんです。急所が解らないらしいんですね。とにかく、そのときのことなんかも、先方は私が金銭に関係したかしないか、ということの狙いですからね。それに対して弁護人が言わせようというんですからね。他のことはなんにもいらない。金銭は他の者がやっている。明主様は教線のことだけだ。と言えば良い。それを、一生懸命に無駄なことを言っている。だから私が……つい「寸鉄」を書きたくなるんですよ。