昭和二十六年十一月十五日  『御教え集』四号 (8)

 それから、これは関連した話ですけれども……嘘ですね。日本人の特徴のように思いますが、日本人は実に嘘を吐くんです。嘘を吐くのが、意識的に嘘を吐くんじゃない。嘘を吐くのが習慣になっている。自分で、嘘吐くのが分からない。それほどに、嘘が身についているんですね。いろいろ、人の話を聞いていると、本当に正直に言うのは、おそらくないと言っても良いですね。必ず嘘があるんです。その嘘が……本人は嘘と思わないで、本当だと思っている。その場合に私が、この点が嘘で、これが本当だと言うと……それでも解らない人がありますね。そうすると、こういう場合に、これが本当でこれが嘘だと言うと、なるほどと言う。簡単なことを、わざわざ嘘を言ってややこしくする。これは、偉い人に多いですね。なにか問題が起る。すると……正直にすると簡単に解決する。それを、ややこしくしている。私に、こういうことを言った人がある。この場合にこう言ったほうが良いですよと言うが、嘘なんです。その御忠告の通りにやってみると、成績が悪いんです。なにか、そこに……スラスラいかないんです。それで、私は思った通りにやるようにした。思った通りにずばっとやる。すると、良い。正直が一番良いですね。正直にしていると、なにも頭に残らないから……気が咎めないから良い考えが浮かぶ。嘘の執着ですね。だから、嘘か本当かが、自分ではっきり分かれば、そこではっきり標準ができる。頭の居所が上になるんですね。特に信者は、正守護神からいろんなことがある場合に、頭をからっぽにするというのは、嘘を吐かないんですね。 また、自分に不純な心がなければ……誠意があれば、いくら本当のことを言っても、いっこう差し支えないんですからね。よく……以前なんか、家内なんかが私に、そんなことを言っちゃいけませんよと言うんです。しかし、私はなんでもありのままに言うんです。すると、あんがい先方は好感を持つんですね。私なんか、ずいぶんひどいことを言うことがあります。いまはそうでもありませんが、以前の……駈け出し時分にですね。はっきり言うんです。すると、先方が怒りそうなものだが、怒らないで笑い出したりします。この点アメリカは非常に正直だと思いますね。映画を見ても、言葉が書いてあるが、あれを見ると、実に正直で、日本人には見られないようですね。だから、アメリカの社会が明瞭だというのは、そういうことですね。もっとも、日本人は封建時代から抑えつけられていたから、はっきり言うと誤解されるからで、これは政治のためですね。以前は、すべて曲げなければならない。最初の『明日の医術』『天国の福音』……『明日の医術』なんか、ずいぶん曲げて書いてある。ぼやかして書いてある。徹底しないというが、徹底して書けないですね。『天国の福音』になると、よほど違っている。このころになると思いきって書くから、徹底してますがね。でもまだ、お医者やなにかに気がねして書いている。今度の『文明の創造』なんかは、ぜんぜんそんなことなく思った通りに書いてある。世界を相手にするので、ややこしい書き方の必要もないし、それじゃ徹底しないからね。それから、言論の自由からいうと、なんら差し支えないからね。どうせいまに出るから、見ると良く分かりますがね。

「『御教え集』四号、岡田茂吉全集講話篇第五巻」 昭和26年11月15日