それから『文明の創造』の中で、種痘のことが肝腎ですから、種痘のことを精しく書きました。今日注射がこれだけ発達したのは、結局種痘のためなんです。ここにやっただけで、天然痘が逃れられる。ありがたいというので、それによって注射というのはだんだんはやるようになったんですね。この前も……古い……『明日の医術』かに書いてますが、今度はあれよりずっと精しく書きましたからね。あの時代は危なくて、そう深く書けなかったですが、いまは時代が違ったから、充分書けるから、良く解ると思います。
(御論文「種痘」朗読)〔「著述篇」第一〇巻二六〇-二六二頁〕
これは以前に一遍出したことがあるお蔭話です。やっぱりこういうのは、みんな専門家に見せるために、ちょうど挿入するのに良いですからね。それで入れたわけです。
あまり、病気のことばかりだから、少し変わったのを……これを読まないうちにさっきの……禅宗とバラモン教のことを言いましたので、それを書いてます。
(御論文「仏教に於ける大乗小乗」朗読)〔「著述篇」第一〇巻三〇一-三〇四頁〕
この大燈国師の有名な看読真詮榜(看経榜)という巻物がある。後醍醐天皇が非常な信者で大燈国師に絶対的にしていた。で、後醍醐天皇をお助けしようとして看読真詮榜という……ずいぶん長い巻物です……後醍醐天皇を助けていただきたいという意味で書いて、仏様にお願いしたわけですね。これは有名なもので大燈国師の看読真詮榜といってたいへんなものです。容易に見せないんですが、特別に見せてくれたんですがね。なかなか、書体も力強い書体です。見ていると、迫力が……まあ、身の引き締まる思いがすると言うが、そんなような具合で、私も感心した。これは余談ですが、後醍醐天皇が、ああいった不幸な目に遭って、結局位を捨てなければならないというのは、この影響がある。だいたい、禅はバラモンから来るんです。名誉とか、天皇とかいう位は、信仰に徹底すれば、なくしなければならない。取ってしまわなければならない。だから、一生懸命になればなるほど、天皇の位に止まることができなくなる。天皇の中で後醍醐天皇なんか一番不幸な人でしょう。それは、信仰の影響ですね。それに違いないですね。