昭和二十五年四月二十三日 『御光話録』十八号(6)

〔 質問者 〕いずれ近いうちにテレビジョンが普及するようになることと存じますが、それでもやはり映画は続きましょうか。

 そうですね、やはり映画でしょうね。二〇世紀の生んだ大芸術ですよ、映画ってものはね。だから、映画がいかに人々を引きつけるかちょっと判りませんね。そして、映画を観てても最初はおもしろいとかつまらないとかだけですが、だんだん深く入ってくと監督のやり口や俳優の技芸なんかにまた別の発見があるもんですよ。本当によくできてる作品を見ると、実際いいなあと思いますし、なんとも言えない味わいを感じますね。けど、これはいいなあと思うような作品はそうたくさんはありませんよ。せいぜい一〇本に一本くらいでしょうね。

 映画のいい悪いは、迫力とか場面場面の落ちつきなんかでも決まりますね。そして世界で日本の映画が一番いいですね。外国のより約一世紀は進んでますよ。ただ機械が悪かったりして技術的には外国のより劣りますけど、内容は日本のほうがはるかに深いんですよ。だから、日本の映画は駄目だなんて軽蔑する人は、まだ本当の味を知らないんですよ。眼識が低いんですよ。外国のではイギリス映画のほうがアメリカのより内容は深いですね。欧州でもいまはアメリカ映画を輸入してないんですよ。だからアメリカ映画はいま赤字ですね。と言うのは、アメリカ映画は一〇年一日のごとしで丸ッきり進歩がないんです、まったく子供だましですよ。喜劇なんかはむしろ退歩してるでしょうね。最近の「凸凹何とか」なんてのよりか、昔のチャップリンやキートンあたりのほうがずっとよかったですね。それから西部劇はピストルの打ち合いだし、……だから、私はアメリカの恋愛物や西部劇はこっちからお断りしちゃうんですよ。観てても眠くなりますよ。観劇じゃなくて眠劇ですね(笑声)。中には怒劇になるのもある見てるうちに腹が立ってきますからね。(笑声)
  

〔 質問者 〕将来撮影所なんかをお作りになることはいかがでしょうか。

 ええ、いまにそうなるでしょう。そうなると信者の中でそのほうの心得のある人は映画の中へ出てくる(笑声)。……日本の俳優もうまくなってきましたね、米国人以上ですよ。表情だって日本の俳優のほうが上ですね。だから日本人は仕合せですよ、世界一の映画がお膝元にあるんですからね。
  

〔 質問者 〕現在大多数の人はアメリカびいきのようですが、これはキッスの所が多いからでしょうか。(爆笑)

 私は嫌ですね。(笑声)
  

〔 質問者 〕キッスのやり方が下手だと存じます。(笑声)

 下手でもありますがね。キッスなんてものは、まあ一つの愛情の表現としてしかたないでしょうが、けどあれを呼びものにしちゃったんじゃニキビ野郎を喜ばすだけになってしまう(笑声)。第一昔から日本人はキッスなんかしませんからね。だからいまになって映画で観るとバカバカしくなりますよ。そりゃあ、愛情がクライマックスに達してある程度やるんならいいけど、やたらにあれをやられちゃあねえ。(爆笑)

「『御光話録』十八号、岡田茂吉全集講話篇第三巻」 昭和25年04月23日