昭和二十四年七月十七日 NHKアナウンサーとの御対談

アナ 失礼ですが、観音教団についていろいろお伺いいたしたいのですが。

 明主様 ええ、なんでもいいですよ。

 アナ なんでもよろしいでしょうか。

 明主様 ええ、ええ、なんでも。

 アナ この正面のお姿を拝見いたしますと観音様のように思えますが、仏教の観音様とは。

 明主様 同じですよ、仏教のとね。違うって言う人もいますがね、同じなんですよ。

 アナ すると、さっき「善言讃詞」というのは。

 明主様 あれは仏教の観音経を土台にして、和歌のように作ったもんですよ。

 アナ 『信仰雑話』というのを拝見いたしましたが、こちらのほうの教義、教典といったものは。

 明主様 あれだけが教義、教典ですよ。まあ、詳しく話すと難しくなるから、分かりやすく言えば病、貧、争絶無の世界建設を目標にしてるんです。

 アナ それが「地上天国」でしょうか。

 明主様 そういうわけです。

 アナ 先生がそういうふうになられた動機は。

 明主様 ちょっと簡単には言えませんね。

 アナ いつごろから始められたのでしょうか。

 明主様 昭和九年の一〇月からです。それが、あのころ新宗教弾圧時代がありましたね。大本教なんかがやられた。……あれの巻き添えをくって弾圧されたんですよ。病気治しをやってたんで。

 アナ はあ、病気治しを。

 明主様 で、そのときは宗教と両方をやってたんですが、それを別々にしてどっちかをやれって言われたんで、そこで宗教は面倒なので病気治しだけやったんです。

 アナ では、終戦後は宗教と病気治しと両方やっておられるんですか。

 明主様 いや、宗教いっぽうだけになったんです。違うんです。

 アナ ああそうですか。……で、信者の数は。

 明主様 十七、八万くらいでしょう。

 アナ それは全国的でしょうか。

 明主様 ええ、全国的です。

 アナ 九州なんかも。

 明主様 ええ、勿論です。

 アナ で、地方のそれが分会や支部になってるんでしょうか。

 明主様 ええ、そうです。

 アナ このような会は月何回くらいあるのですか。

 明主様 月に六回休みます。

 アナ だいたい、分会の方が代わる代わる集まってみえるんでしょうか。

 明主様 ええ。教師、教導師という人が大部分です。

 アナ そういう方はどれくらいでしょうか。

 明主様 約三〇〇〇人でしょう。

 アナ ちょっとお見うけいたしましたが、信者の方がつけられるバッジに種類があるようですが。
 明主様 あれは作っちゃったんでね。いまさら捨てるのはもったいないから作っただけは使ってるんです。
 アナ 中の十文字はなんの意味でしょうか……キリスト教となにか関係が。

 明主様 関係って言うより、これは私のほうの解釈ですがね。十字は経緯を結ぶっていう意味なんです。経は東洋、東洋文化ですね。緯は西洋であり、西洋の物質文明なんです。また、経は祖先との繋がりであり、緯はキリスト教の博愛的な精神です。だから、今度敗戦によって日本が民主国家になったということは、経に緯の棒が入ったってことなんです。いままで忠君愛国といったふうな経だけのところへ緯が入ったわけですよ。

 アナ よく分かりました。……信者の中の有名人は。

 明主様 ありますね。しかし有名人は名前を発表されることを嫌がるんですよ。ちょうどインテリによっては……ま、いままで迷信だとしてたためでしょうが、いまさら具合が悪くて隠すようなもんでね。また、私のほうでも有名人を利用したくないんです。宗教自体に本当の力があれば自然と発展する……と信じてますからね。

 アナ なかなか御謙遜な(笑声)……。隠すっていうのはやはり信心が足りないからでしょうか。

 明主様 まあそうですね。

 アナ 霊のこと以外ならわれわれにも理解ができるんですが。

 明主様 まったく、霊ってのは目に見えないんでね、始末が悪いんですよ。(笑声)

 アナ 「科学と宗教は一致するか」という放送討論会では、結局科学と宗教は次元、世界が違うというふうに言われてましたが、先生のお話では宗教が科学の繩張りまで入って来てるように思えますが。

 明主様 いや、宗教と科学は一致するんですよ。ところが、いまの科学は霊を見るところまでまだ来てないんですよ。やっと原子が発見されたところですからね。原子からもう一歩進むと霊子を発見するようになりますよ。いまはまだそこまで進んでないんですよ。

 アナ 例の「条件反射」では頭の働きを涎かなにかで説明しますが。

 明主様 そんなに難しく言わなくてもね。もう少し進むと顔をこうやっただけで(そばへお近づけになられる)相手の気持ちが判るようになっちゃうんですよ。(爆笑)

 アナ いまでも相思相愛の間ならできるでしょう。(笑声)

 明主様 そうですよ。だから「目は口ほどに物を言う」って言う◎ん◎です。(笑声)

 アナ 具体的になりますが、先ほどの御原稿の中で「種痘によって抑えられていた天然痘の毒が疥癬になって出る」とありましたが、先生も種痘はなすってるのでしょう。

 明主様 ええ、やりましたよ。

 アナ それはまだご存じでなかったからですか。

 明主様 ええ、そうです。

 アナ 私も種痘をやりましたが、疥癬はまだ。

 明主様 あんたは顔色が悪い(爆笑)。疥癬やると顔色がよくなりますよ。

 アナ どうもお話が飛躍してしまって……。すると、疥癬によってだんだんに毒を出すんでしょうか。

 明主様 試験みたいですね(笑声)。疥癬はやったほうがいいですよ。

 アナ 無肥料栽培ということも事実に基づくのと理論的のと二つの方法があるように思われますが。

 明主様 私は実験したんです。もう実験済みですよ……。科学が先に立って導くこともあるが、事実が先に起って科学があとから理屈をつけることもあるでしょう。

 アナ そういうこともあるかもしれません。

 明主様 そのうちにね、無肥料栽培についての本が出ますよ。一つあんたやってみなさい。よくできればいいんでしょう。

 アナ 作物に浄霊ということをするんでしょう。

 明主様 やらなくてもいいんです。

 アナ あ、いいんですか。

 明主様 ええ、いいんです。今度の本に無肥料でやったのと、それに浄霊をやったのと二つの場合が書いてありますから、読んでごらんなさい。

 アナ それでするとどれくらいできますか。

 明主様 ま、詳しいことは本を見てもらうんだな。そしてまだ疑念があればやってみることです。

 アナ さっきの御質問にも、大豆粕は毒にならないが、化学肥料は毒になる……とのことでしたが。

 明主様 事実です。

 アナ ははあ、事実。(爆笑)

 明主様 ええ。化学肥料を使うとできも悪く、虫もつくんです。ほかを見てごらんなさい。雑草には虫がつかないでしょう。あれは化学肥料がないからです。ですから実験してみるよりほかにない。例えば、いまあんたがどっか痛いって言っても、私がちょっとこうして浄霊すれば治ってしまうんです。だから理屈よりも、勿論理屈もありますが……。あんたね、一番いいのはね、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」って言うでしょう。だから研究してごらんなさい。(笑声)

 アナ いま私は無神論者ですが、これにも限界のあることは分かります。

 明主様 ええ、無神論には限界がありますよ。……だから私はよく無神論者に言うんですよ。恋愛ってのを科学的に説明してみろって……バーナード・ショウは「恋愛は種族保存の為だ」と言ってますがね。

 アナ 私もそれに共鳴します。

 明主様 私も共鳴ですよ(爆笑)。しかし、恋愛が種族保存のためとしてもなぜ恋愛が起るのか、また性欲のない恋愛があるのはなぜかという疑問は残る。

 アナ 科学もまだですから。

 明主様 ええ、そうですよ。科学はまだまだです……。私のほうのは二一世紀の科学だから現代人には説明できない。いままでだって時代より進みすぎてるときには、その時代にいれられなかったことも歴史上にあるじゃないですか。

 アナ ええ、コペルニクスのようなこともありましたが……。お話を元へ戻して、医学に関することは御自身
でそう思ってらっしゃるんですか。

 明主様 思ってるんじゃない、事実です。

 アナ 事実と思われるのは。

 明主様 ですからね、独善や観念でなく、事実ありのままですよ。

 アナ 初めはどういうことからお始めになったのでしょうか。

 明主様 私はさんざん病気をして薬を浴びるほど服んだんです。が、その結果……これを言いたくないんだが……三月ほど神懸り的になった。それまでの私は無神論のコチコチで、神社の前を通ってもお参りしたことなんかなかったもんでした。しかし、とうとうこの無神論も神様からやっつけられてしまったんです。

 アナ 医学に見放されたこともおありだったのでしょうか。

 明主様 それもありますが、もっと大きく、唯物主義というものは半分で、人間は霊によって動くんだから、唯心的な面が必要だということを覚ったんです。

 アナ 二つあってもいいんじゃないですか。

 明主様 いや、だんだん進むとこの二つが一つになる。片方は見える世界、いっぽうは見えない世界ですね。いままでの宗教家は物質の面を否定してたんですが、本当は二つが一つになるべきなんです。

 アナ それで先生の方法で効果があるから、みなさんにお奨めになるんでしょうか。

 明主様 いや私はすすめやしませんよ。信者がすすめてるんです(爆笑)。私はさっきみたいに多少の話をするだけです。

 アナ よけいなことかもしれませんが、信者の方はお気の毒ですね。

 明主様 信者はあんた方のほうがよっぽど気の毒に思ってますよ。(爆笑)

 アナ 信者の方は年齢的には。

 明主様 若い人が多いですね。

 アナ 性別は。

 明主様 女の人がいくらか多いでしょう。

 アナ 階級的には。

 明主様 そう、……これはもうあらゆる階級を網羅してますね。また、そうでなけりゃ救いではないですからね。仏教哲学みたいに難しいんでは一部の学者っきり分からない。

 アナ 教育程度は。

 明主様 博士もいれば、大学教授もいますよ。

 アナ 小学校だけのもいるでしょうね。

 明主様 それもいる。役員には大学出がたくさんいますよ。

 アナ 役員は先生がお決めになるんですか。あるいは選挙かなにか。

 明主様 いや、自然に決まっちゃうんですよ(爆笑)。私が決めるんでも、選挙でもないんです。

 アナ 先ほど、永井博士の原子病も治るとかいうお話でしたが。

 明主様 ええ、そうです。

 アナ 博士は唯物主義者とのことでしたが、あの人はクリスチャンですけど。

 明主様 ええ、クリスチャンですね。だからキリスト教でならやってもらうでしょうが、ほかのでは受け入れないでしょう。キリスト教の中にも派が分かれていて、祈りによって病気を治すのもありますね。クリスチャン・サイエンスなんかはそうですね。だから、永井博士には別に。

 アナ 他の宗教に対して、例えば踊る宗教とかPL教団などとかに対しては、どうお思いでしょうか。

 明主様 ああいうのもみんな必要があって生まれるんです。が、必要があると言っても、人にも大きい仕事をする人、中位の仕事をする人、小さい仕事をする人などいろいろあるように、宗教にもそれがあるんです。

 アナ 別に悪いとはお思いにならないんでしょうか。

 明主様 悪いなんてことは言えませんよ。もし悪ければ自然に消滅するんですから。だから共産主義だって必要なんですよ。もしあれがなかったら労働者は資本家に搾取されてしまいますから、労働者の権利を守るために必要なんです。しかし出すぎてはいけない。共産主義が共産主義以外に出ては神様からとめられるんです。つまり、これは神様が霊界で操っておられるんだから。

 アナ また、霊界に戻るんですか。(笑声)

 明主様 ええ。

 アナ 先生の御本によれば、人間が死んでから動物に生まれるとありましたが。

 明主様 二種あるんです。動物にも本来の動物と、人間が動物に生まれ変わったのと二種あるんです。

 アナ じゃ、仏教の輪廻というふうに。

 明主様 ええ、そうですね。

 アナ そういう点も現代人は理解されないんですが。

 明主様 理解されないように教育されてきたんですからね。いままでの教育は唯物教育であり、ユダヤ教育だったんです。ユダヤ人っていうのは頭がいいですからね。しかし、唯物的な面もいままでは必要だったんですね。物質文化を発展させるために。

 アナ 実は先ほどお伺いを出したんですが、下山氏の死が自殺か他殺かについて。

 明主様 あれは私の範囲ではないから……。国家的に大きいことなら神様から知らされますがね。あんなのは小さいことだから神様には聞きませんよ。また、小さいことは知ろうともしません。

 アナ 予言めいたことを感じられたでしょうか。いままでも、東京が焼けるから熱海に移られたということがあったそうですが。

 明主様 ええ、感じたことがありますよ。天皇がいまのようになることなんか二〇年前から知ってました。しかし、あのころそんなことを口にしようもんなら、それこそたいへんだったから黙ってたんです。

 アナ 御本によれば観音様が先生のお体に在るとか。
 明主様 いや、観音様じゃなくて、光の玉が私の腹にあって、観音様から霊線によって光が来るんです。

 アナ では受信機のような。(笑声)

 明主様 ええ、受信機です。ラジオの機械です。

 アナ これは本当に失礼と思いますが、教団の資金はどういうふうに。

 明主様 会費とかお賽銭とか。

 アナ 会費は月いくらでしょうか。

 明主様 月、三〇円です。

 アナ あとは。

 明主様 寄付です。こういうもの(早雲寮のこと)を作るんでも、造営基金を募るんです。ところが死ぬところを助かってピンピンしてしまうと、ありがたくてしかたがないんで、その人の所に金が入るとこっちへ持ってくるんです。

 アナ 物も持ってきますか。

 明主様 物もあります。

 アナ 強制ということは。

 明主様 いや、強制的に持ってこさせるなんてことはしませんよ。税金じゃないんだから。(爆笑)

 アナ 五六七会というのはどういう関係でしょうか。

 明主様 観音教団と二つになっているんです。ま、陰陽ですね。

 アナ 五六七会では大黒様を祀っておりましたが。

 明主様 いや五六七教会だけじゃなく、だれでも大黒様を持ってますよ。

 アナ どういうわけでしょうか。

 明主様 あれはね、私は昔毎月赤字が続いたことがあったんです。そのときある人から大黒様をもらったので観音様の前に置いたところ、その月から赤字がなくなってしまったんです。で、私はこれは不思議だってわけで、それからだんだん集めるようになって、一頃は五〇くらい集まりましたよ(笑声)。……とにかく大黒様を祀ると金が入ってくるんですよ。

 アナ 最初のはどんな大黒様だったのですか。

 明主様 あたりまえの大黒様です。裏に文久何年とか彫ってありました。

 アナ ……というわけで祀るんですか。

 明主様 ええ、そうです。

 アナ それも、やっぱり事実でしょうか。(笑声)

 明主様 ええ、事実です。(笑声)

 アナ 信者の方が持ってくるのは。

 明主様 開眼してもらうためです。

 アナ 信者もそれにあやかるってわけでしょうか。

 明主様 そうですね。

 アナ じゃあ、私も一つ大黒様を。(爆笑)

「岡田茂吉全集講話篇第三巻p328」 昭和24年07月17日