昭和二十四年六月二十三日 講話(8) 光録12

〔 質問者 〕私は教員をいたしておりますが、左のことについてお伺い申し上げます。
(一)現在の民主的教育方法
(二)教育者の立場として医学はどのように扱うべきでしょうか。

 (一)戦時中の教育よりいまの教育のほうがずっといいですね。比べものにならないくらいいいです。以前の教育は、侵略主義によって国民を教育し、国威をさかんにするということを根本として作られたんだから。いままでの教育は天皇に生命を捧げるとか、日本をよくすることとかにすべての目標をおいていたんです。今度の新しい教育は、その目標をもっと大きく拡げて、世界の人類の平和や幸福のために……ということに目標をおくんですから、こっちのほうが大乗的ですね。

 (二)これは厄介なんですよ、これはどうとも言えませんね。本当のことを言えば首になってしまうしそうかといって嘘を言えば、人間を弱らしたり生命をなくしたりするんですからね。……こういう点で苦しんでいるのは教育者ばかりじゃありませんよ、私が一番苦しんでいるんです。ですからね、こういうことは適当に、非難されないようにやってたらいいでしょう。先にもある大学の薬学博士のNって人が、病気が治ってこの道へ入ったんですが、弱ってましたよ。なぜかって言えば、大学で薬学の講議をするとき、いったいどっちを言ったらいいのか判らないって言ってましたがね。

 それから、たいていの教育はね、子供を大人のようにしてしまうんですが、これは間違いですよ。子供は子供らしくするのが本当ですよ。だから、子供の年齢に合った教育じゃなくちゃいけないんです。しかし、こういうことに対して教員が反対したりなんかはできないから、まあ、適当にやるよりほかありませんがね。

「『御光話録』十二号、19490921、19490623、岡田茂吉全集講話篇第二巻」 昭和24年06月23日