昭和二十四年五月三日 講話(13) 光録10

〔 質問者 〕人間苦を描いた音楽、文芸などの芸術はすべて光明世界になるに従って自然消滅して行くのでしょうか。

【 明主様 】 ある程度消滅するんです。消滅するほうが多いですね。この、音楽にしろ、文芸にしろ、芸術というものはすべて、人間の情操を養い想念を向上させるのが目的なんです。ところが、いまの芸術には人間を堕落させるものがたくさんあります。殊に文学なんかにはそれがずいぶんありますよ。悪魔文学なんですね。悪魔が文学を利用して人間の想念を悪くするんです。 

 人間苦を描いたものっていうと、ベートーヴェンの音楽なんか代表的なものですが、こっちが苦しんでいる人だと非常に興味を持つんですが、こっちが仕合せで楽天的だと興味がちっとも湧かないんです。そこで、音楽でもそうですが、すべてそれによって一人でも多くの人の思想を向上させるのが一番高級な芸術で、それが神の芸術なんです。五六七の世にはそういうものが多くなるんですよ。

 絵でも、大勢の人が見て楽しめるのが本当なんです。ところがいまの絵は個性を表わしすぎててふつうの人には判りませんよ。フランスの大家と言われるピカソ、ルオー、マチスなんかの絵はぜんぜん他の人には判らないものです。この間、ルオーの絵をある人が持って来ましたが、五寸四方くらいのものでしたが、ちっとも判らないんです。二八万円で買ってもらいたいって言ってましたが、私は二万八〇〇〇円でもあんなのは嫌ですね。あれなんか芸術が邪道に入ってるんですよ。

 つまり、自分だけいくらよくったって、他の人が楽しめなかったら無用なんです。それによって人間の本性を向上させるものじゃなくちゃ本当のもんじゃないんですよ。そして音楽でも芸術でも、作者の魂が作品を通じて耳に入り、眼に映りして人間の魂に通うんですから、作者の魂が低ければどうしたって立派な芸術は生まれませんよ。芸術を通じて人を感動させるんだから、芸術家は特に品性が高くなくちゃいけないんです。
 それよりも一段と高いのは宗教家ですね。心と心が触れ合ってその人の心が先方に通じるんですからね。だからこっちに邪念があったりすれば、いくら宣伝したって人をよくする力はぜんぜんありませんよ。