昭和二十三年一月一日御講話(1) 光録(補)

(新年の大先生御歌)

いたつきの漸く癒てあらたまの年の始を迎ふうれしさ

あらたまの年を迎へて身も魂も清きかりけり神とある身は

ぬばたまの闇地<路>も尽きて光明の道踏み初めし心地こそすれ

日月地三位山体の御カを具備して出でます弥勒大神

(右の御歌を福居秀介氏の伴奏にて作曲家杉山長谷夫氏独唱)

【 明主様 】なかなかよくできてます、雅楽調ですね。仏教なんかよりずっとよい。仏教のは活気がない、なにか幽界へ引っ張って行かれるようです。やっぱりやる人が坊さんだからでしょう。西洋の音楽ではへンデルのメシヤがすぐれています。あの程度でもたいしたものです。メンデルスゾーンのもありましたね。

 〔 質問者 〕ハイドンもあります。

【 明主様 】ああそうですか、あんたの『出船』は藤原義江がよくやりますね。

 〔 質問者 〕藤原さんがほとんど紹介してくれました。

【 明主様 】作曲家はいいものです。

 〔 質問者 〕どうも貧乏で困ります。

【 明主様 】いや両方いいのは難しい。

 〔 質問者 〕残したのは中山晋平です。

【 明主様 】あれはこのごろあまり作りませんね。

 〔 質問者 〕もぐり込んでるようです。

【 明主様 】音楽でも日本のよいところを日本人が認めるべきですね。日本音楽では琴が一番いい、あんなすばらしいのは西洋にはない。日本のは静的、西洋のは動的ですね。そこに相違がある。また西洋にも子守歌がたくさんあるが、日本のものくらい条件にかなっているのはない。日本のを聞いていると眠くなるが、西洋のではせっかく眠くなったのに眼が覚めてしまう。日本からすばらしい音楽が出るといい。

 音楽もいいもんですがね……実際どうもベートーヴェンの味は一部分きり判らない。全般はどうしても判らない。

 ショパン、シューベルト、モーツァルトはよく判りますが、西洋のは古いほうがいいですね。最近のは理屈の音楽だ。

 長唄でもいいのは古典です。大正以後のは駄目です。

 〔 質問者 〕『越後獅子』や『カッポレ』ほなかなか名曲です。

【 明主様 】芸術品も私は好きですが、昔のほうが新しいですよ。最近のには本当の新しみがない。音楽にもこういう点があるのでしょう。こんなことは実に不思議ですね。ジャズは私には判らないですね。やっぱり踊るためでしょうな。音楽そのものを味わうことはできない。

 〔 質問者 〕あれは酒と女の音楽です。

【 明主様 】そうでしょう。
 アメリカ人には、なかなか人道的ないい点と野蛮人的趣味と両方がありますね。彼らは最初イギリスから渡って土人と結婚したためなんでしょう。土人的趣味がジャズとなって現われているんですね。アメリカ人の野性に富んだちょうど西部劇のような深みのないもの……

 〔 質問者 〕ジャズの調子はニグロ的です。日本の馬鹿囃子<ばやし>は、馬鹿ではなくいいものです。リズムはとてもすぐれてます。

【 明主様 】日本のジャズですね。日本人がいまに日本を発見するでしょう。青い鳥みたいですね。日本にはいいものがありますよ。絵でも本当の絵は日本画です。油絵は絵ではなく、ただなするだけです。日本のは単純であってしかも深い、油絵も印象派が出てからまた妙ちきりんになりましたね。

 いままでは日本人のすぐれた点を封建的な力が押さえていたんです。これから日本人の天才を発揮する時が来たんです。

 建築でも木目などに気のつくのは日本人です。西洋人や支那人はみな色を塗ってしまう。

 〔 質問者 〕朝倉文夫さんの所へアメリカ人が来て、彼の設計になる家を見て感心しています。朝倉さんは日本主義の人で、学校は西洋カブレしているからとて、子供さんを自分で教育しています。

【 明主様 】そんなに偏らないでもいいんですよ。しかしアメリカ人の建築家のライトだけはすばらしいですね。あの帝国ホテルを設計した人です。音楽でも外国人が研究するために、日本の昔のよいレコードが輸出されているそうですね。マダムバタフライには日本の「フシ」が入っています。

 洋画が純写生風から脱却したのは尾形光琳が輸出されてからですよ。世界中の美術、彫刻は光琳の影響をうけています。ルネッサンス式を光琳がぶちこわしたんです。今度は音楽でも光琳が出るでしょう。宗教、医療は勿論われわれがやる。いまのだいたいインテリは、いいものは西洋のものでなくちゃならないと思っている。軍閥時代の「日本的」も困りもので、戦争に都合よいところだけ日本的にしたんです。その結果は竹槍くらいのところです。日本のいいものは平和なところにある。日本のよさをこれから外国人が発見するでしょう。そうしたら日本人はビックリするんですよ。イタリアへ行って土産にマカロニを買って帰ったら日本製だったというふうに。

「『御光話録』(補)(年代不詳1951頃)、岡田茂吉全集講話篇第一巻p356~P360」 昭和23年01月01日