人類愛に立脚した正しい愛国心を

 世界各国を見渡しますと、大国も小国も自国を愛するという気持はまことに強いようです。自由主義、共産主義などいろいろ違いがありましても、みなおしなべて強い愛国心<あいこくしん>を土台にしております。ところが、日本の場合はどうでしょう。現状を見渡しますと、どうもこの点非常に心もとない感がいたします。

 たとえば、政治上の争いにしても、民主主義国家として当然守るべき粋<わく>があるのに、それを外してまで争っていることが多いように思います。そして、あげくの果ては暴力<ぼうりょく>に訴<うった>え、お互い日本人同志が憎<にく>しみの心をもって対立するというのでは、心ではいくら日本をよくしようと思っても、結果において国が弱ることになります。

 日本は戦前において歪<ゆが>められた愛国心を強<し>いられたことがありました。それは人類愛に立脚しない独善的なもので、狭<せま>い視野にたった愛国心であったため、戦争という誤った方向へ進み、ついに敗戦<はいせん>の憂目<うきめ>をみたのですが、今度は逆にその反動として、当然持つべき誇<ほこ>りや愛国心すらも失った観があります。戦争直後のいき過ぎはいたし方ないとしましても、そろそろ正しい批判と自主的行動が生まれてこねばならぬと思います。

 日本はいかなる国をも敵視<てきし>することなく、世界の国々と仲よく交<まじ>わり、ひとつの世界を目ざして平和の使命を果たすべく、これからは挙国一致<きょこくいっち>で、まず、日本から平和の手本を示していかねばならないものと思うのであります。それには第一に国力の回復<かいふく>、道義<どうぎ>精神の発揚に努<はつようつと>めることが先決<せんけつ>でありまして、かくして、はじめて他国から尊敬<そんけい>を受けるのであります。

 万国には万国独特の天授<てんじゅ>の個性があり、それはやがて築かれるひとつの世界を構成<こうせい>する重要な役割<やくわり>を果たすのであります。日本に生まれたということは、日本の使命を愛しつつ、世界人類に貢献<こうけん>することであります。国籍不明<こくせきふめい>の国際主義者<コスモポリタン>では困ります。御教えにも、『今後の愛国心を具体的に言えば、同胞<どうほう>九千万人の生命の安全を第一とし、道義的正義の国家として世界の平和に貢献し、愛敬<あいけい>を受けることである』とありますが、まことにそのとおりであります。

 世界救世教と世界の名を冠<かん>し、世界人を標榜<ひょうぼう>している私どもでありますが、同時に日本人という個性も大切にするわけであります。日本の美しい国土、芸術、良風美俗<りょうふうびぞく>、惟神の道などを大切にして、世界人類の平和と幸福のためにそれらをいかし、発展させることこそ、私どもに課<か>せられた仕事と思うのであります。