明主様はいつも、『私の思った通り、言った通り実行の出来る人は英雄だ』とおっしゃって、実践がいかに難かしいものであるかを、よく説いておられましたが、実際に、思ったり言ったりすることはやさしいですから、だれにも出来ますが、これを行なっていくということは、きわめて難かしいことなのです。
明主様が言葉に出されたときは、行ないに移されるときであって、言葉に出たことは、すでにやっておられるのであります。
明主様をよく知っておられる人がよく言われましたが、「自分はいろいろな名士と交わって来たが、明主様ぐらい実行なさる方はない。他の人はよくこうしようなどと、計画だけは打明けられるが、すぐそれを始める人は少ない。明主様はおっしゃっているときは、もう始めてらっしゃるときなんだから、これだけ大きなことが出来るんだ」と言って感心しておられましたが、明主様はもう待ったなし、自分でなさるか、捨ててしまわれるかで、まことに即決主義でした。
明主様は江戸っ子がご自慢でありますから、仕事に対しても生きのいいところが大好きであられまして、人が十年かかるところを一年でやられるというふうでした。
美術品蒐集にしてもそうです。超スピードで短時日のあいだに、あれだけの、しかも広範囲に美術品を集められたという点で、他に類例がないから、だれも驚嘆し敬服されるのです。美術品蒐集は、金と暇をかければだれでも出来ますが、あのスピードは出せないというのが、ほんとうでしょう。そこに明主様の明主様たるところがあったのです。
明主様のご在世中には、いわゆる「宇宙時代」は来なかったが、明主様は、ひと足早く宇宙時代のスピードでお仕事をなさったわけです。
明主様はまた、何事にあれ、思い立たれたらその場で命令されていましたが、これがまた精神衛生の面からいって最もよいのです。いつか言おうとか、いつかしようと心に溜めておくことは心の負担になりますし、忘れることもありますから、早くだれかに言いつけてしまえば負担とならず、つぎの仕事を始められるというわけで、即決主義はイコール清潔主義といえましょう。つまり惟神に浄霊されている状態です。このような精神状態でいて初めて一生のうちにたくさんの仕事が出来ることにもなります。
それからまた、そのようにたくさんのお仕事が出来た理由のひとつには、明主様はお歩きになっている時でも、たえず頭を使っておられましたし、少しも油断がなく、ちょうど剣道の気迫と同じでしょう。宮本武蔵なんかもそうなのでしょうが、ネジが弛んでしまったというところがありませんでした。