医学革命の書 序文

 凡<およ>そ人間としての最大欲求は、何といっても健康と長寿であろう。他の凡<あら>ゆる条件が具備しても之が得られないとしたら、何等意味をなさないのは今更言う迄もない。従って人間生の執着程強いものはなく、此執着から離れられないのが人間の特性である。といってもそれを免れる事の不可能なるが為、今日迄は諦めていたに過ぎないのであって、若<も>し此<この>解決可能な方法が発見されたとしたら、之<これ>こそ人類にとっての最大福音であり、大問題である。処が喜ぶべし、その欲求は完全に達せられたのである。即ち凡ての病気は医<いや>され、天寿を全うし得るという実に驚くべき新医術が、私によって創造された事であって、此医術が普く世界に知れ渡るに於ては、既成医学は当然革命されなければならないと共に、人類の理想たる病なき世界は茲に実現するのである。そうして先ず現在に到る迄の医学の歴史からかいてみるが、抑々今日の医学なるものは、知らるる如く西暦紀元前、彼の有名な医聖ヒポクラテスによって創<はじ>められ、その後欧羅巴<ヨーロッパ>に於ては医療以外、信仰、星占、霊療法等様々な治病法が現われ、東洋に於ては古代から神儒仏の信仰による医<いや>しの業をはじめ、易占<えきせん>、禁厭<きんえん>等の外、支那漢時代に到って漢方医術が生まれ、支那全土は固<もと>より、特に旺<さか>んに採入れられたのが我<わが>日本である。西洋医学渡来前までは、今日の西洋医学の如く漢方が一般に普及された事は衆知の通りである。

 処が十八世紀後半に到って、俄然擡頭<たいとう>したのが科学である。之が素晴しい勢を以て欧羅巴全土は固より、世界各地に拡がり、遂に今日の如き科学万能時代が現出したのである。それというのも凡ゆるものが科学によって解決され、それ迄不可能とされていた凡ゆるものが可能となる等々、遂に絢爛たる近代文明が確立されたのである。従って此恩恵に浴した人類は、科学を以て無上のものと信じ、科学ならでは何事も解決出来ないとする一種の信仰的観念にまでなったのである。特に医学を以て科学中の最も重要な部門として扱われた結果、人間生命の鍵をも握って了った事は、恰度宗教信者が神に対する尊信帰依<そんしんきえ>と同様で、他を顧りみる事さえ異端視せられるというようになり、世は滔々<とうとう>として科学信仰時代となったのは知る通りである。

 之によって医学は客観的には驚くべき進歩発達を遂げ、人類の福祉は一歩一歩増進されるかに見えるが、一度<ひとたび>冷静な眼を以てその内容を検討する時、之は又意外にも進歩処<どころ>か、反って逆コースの道を盲目的に進んでいる有様であって、その迷蒙なるいうべき言葉はないのである。何よりも事実がよく示している。それは病気の種類は年々増え、罹病率も減る処か、益々増える一方である。その結果人間は常時病の不安に怯え、寿齢にしても一般人は六、七十歳が精々<せいぜい>で、それ以上は不可能とされている。上代の文献にある如き、百歳以上などは昔の夢でしかない事になって了った。勿論百歳以下で死ぬのは悉<ことごと>く病の為であるから、言わば不自然死であるに反し、自然死なら百歳以上生きられるのが当然である。というように人間の健康は極めて低下したにも拘わらず、それに気付かず、遂に病と寿命のみは宿命的のものとして諦めて了ったのである。而もそれに拍車をかけたのが彼の宗教であって、それは斯<こ>う説いている。即ち死は不可抗力のものであるから、その諦めが真の悟りとして諭<おし>えたのである。彼の釈尊が唱えた生病老死の四苦の中に病を入れた事によってみても分るであろう。

 そのような訳で現在の人類は、病の解決は医学の進歩による以外あり得ないとし、万一医療で治らない場合、止むなき運命と片付けて了う程に信頼しきったのである。処が之こそ驚くべき迷蒙である事を、私は神示によって知り得たのである。というのは医療は病を治すものではなく、反って病を作り悪化させ、遂に死にまで導くという到底信じられない程のマイナス的存在であるという事と併せて、凡ゆる病を治す力をも与えられたのであるから、之によって普く人類を救えとの神の大命であって、今日迄不可能と諦めていた夢が、現実となって此地上に現われたのである。現在私の弟子が日々何十万に上る病者を治しつつある事実によってみても、何等疑う処はあるまい。万一疑念のある人は、遠慮なく来って検討されん事である。

 以上の如く此驚異的新医術の出現こそ、今日迄の如何なる発明発見と雖も比肩する事は不可能であろう。何しろ人類から病を無くし生命の延長も可能になったとしたら、彼のキリストの予言された天国の福音でなくて何であろう。之が世界に知れ渡るに於ては、一大センセーションを捲き起し、世界は百八十度の転換となるのは火を睹<み>るよりも明かである。最近の大発見として世界に衝撃を与えた彼の原子科学にしても、之に比べたら問題にはなるまい。私は叫ぶ、最早人類最大の悩みである病は茲に完全に解決されたのである。故に此著を読んで信じ得られる人は天国の門に入ったのであり、之を信ぜず躊躇逡巡<ちゅうちょしゅんじゅん>、何だ彼んだといって見過す人は、折角天の与えた幸福のチャンスを自ら逃して了い、何れは臍<ほぞ>を噛む時の来るのは、断言して憚<はばか>らないのである。

「医学革命の書」 昭和28年01月01日

医学革命の書