治療についての個々の注意を挙げてみるが、人間を霊と体に区別する時、背部は霊にして腹部は体に相応するのである。したがって霊主体従の法則により、あらゆる病患は背部が重要であり、背部の治療をよく行わなければ真の効果はないのである。すなわち背部の毒素が溶解しただけ前部の病患は軽減するのである。例えば胃痙攣の激痛といえども、その激痛部だけの治療では効果は少ない。その場合背部を診れば左右いずれかの肩胛骨<けんこうこつ>と脊柱との中間に必ず固結がある。その固結を治療するやたちまち胃部の激痛は解消するのである。しからば右固結は何であるかというと、これは薬剤の固結したもので、服薬を持続し仰臥<おうが>する関係上、胃の後方から滲透背部へ沈澱固結したものである。
又湿性腹膜炎における膨満も、化膿性腹膜炎の膿結も、背面腎臓部を治療する事によって奏効するのである。その他心臓、肺、胃腸に関する疾患も、すべて背部を主に治療すべきである。
次に、人間の健康不健康を判別するについて最も明確に知り得る方法として、まず肩部を診る事である。肩部が柔軟で、指で圧して指頭が一寸位没するような人は必ず健康であるが、肩部が硬く柔軟でない人は不健康と断定して差支えないのである。結核者は例外なく肩部は固く、重患者といえども肩部柔軟者は回復しやすく、軽病者といえども肩部強堅者は回復困難と共に、強浄化発生しやすく、その為生命の危険は免れ得ないのである。ゆえに理想的健康診断法として肩部を診る事こそ、正確であり簡単である事を世人に告げたいのである。
次に頭痛の場合は必ず前額部に熱発を認めるが、その部を治療してもあまり効果のない事がある。その場合耳下腺を主とし、淋巴腺へかけて大抵の人は固結があるから、その所を治療する事によってたちまち下熱、頭痛は去るのである。ゆえに頭痛以外の一般発熱者に対しても耳下腺、淋巴腺、扁桃腺部等を一応指査すれば必ず大小の固結を認めるから、それを治療する事によって下熱する場合が多いのである。
次に、腕、指等疾患の場合、その本源である淋巴腺から肩、腕の頂部に当る所を充分治療すべきである。それによって手指といえども、その治療が容易に奏効するのである。したがって脚に関する疾患も右と同様、その根原である腎臓部、脚の付根等をよく治療すべきである。
ここで重要な事がある。それは平均浄化作用なるもので、ある一局部の溜結毒素を溶解した場合、間もなく右以外の局所に浄化が起る。これを平均浄化という。たとえば左腕が痛むからそれを治療し治癒すると今度は右腕が痛み出す。それを治療すると背中が痛むというように、ちょうど痛みが移動するごとく想えるので、患者も痛みの移動を訴えるが、実際は痛みの移動などという事はあり得ない。これ等は平均浄化作用に因るのである。