明主様が装身具の卸問屋をしていらしたころのことですが、ある日、明主様は人力車で浅草へ映画を観に行かれたのです。
ところが、その車夫は若いにも似合わず、ヨロヨロしながら車をひいているので、『まだ新前だね』と尋ねられると、車夫は、「ええ、新前です。実は私、苦学生でして、車ひきなどしたくないのですが、なんとか学校を卒業するまで頑張りたいと、こうして車を借りてやっているのです」との答えです。
そこで、明主様が、『それは感心だ。一体どこにすんでいるんだぼくはこういう所に住んでいるから、一度訪ねて来たまえ。場合によっては学資を出してやってもよいから』と言われると、車夫は大変喜んで、それからほどなくして訪ねて来ました。
そして、いろいろと身の上話を聞かれて、同情された明主様は、その苦学生が卒業するまで学資を送る約束をされたのです。
苦学生は、「このご恩は一生忘れません」と、大層喜び感激して帰って行きましたが、その後立派に学業を了え、なんでも警官になったとか聞きました。
しかし、名前も何もわからないので、その青年の後日物語をお請出来ないのは残念ですが、明主様は学資ばかりでなく、衣類なども与えて、面倒を見ておられたようです。