茶人の真髄を

 茶事の時は、お客になるよりは亭主になって、いろいろ道具立てを考えたり、作戦を立てたりするのが楽しいと申しますが、明主様もむしろお客ぶりよりも、ご亭主ぶりの方を、楽しみになった方じゃございませんですか。

 お客をなさる時、お掛物をいろいろにご選択をなさったり、お花もお手ずからお瀞けになったり、ご自分で部屋の飾りつけを何度もお香えになって、あれはどうだ、これはどうだとおっしゃって、お楽しそうでした。

 とかく世間では、お点前だけがお茶というようにお考えになる方が多いわけですが、むしろお点前はひとつの手段でございまして、お客さまに気持よく召上がっていただくために、お点前の習練をしますわけで、せいぜい良い環境で、せいぜいおいしく楽しく召上がっていただきたいと、そのためにいろいろ苦労し、心をくばるのが亭主でございましょう。これがお茶人の一番大事なことでございます。明主様はお点前はなさらなくとも、お茶人のほんとうの真髄をおつかみになっておられましたんです。

 明主様は、普通の人がお稽古した終点のところから逆に関心をおもちになっていらしたわけで、普通なら、ひとつ、ひとつの段階を追って上がってゆかなければならないところを、最初からてっぺんまで上がってしまわれていたような格好でございます。