知らん顔していても見通し

 私が御用させていただくようになってから、半年ぐらい経ってからでしょうか。側近の主任をしていたM君がお膝元を去ったので、私がかれの御用を引継がせていただくこととなったのです。

 M君は内事庶務会計の仕事をしており、信徒たちの信用もありました。

 かれが失踪した後、明主様は、『あれは大分使い込んでいるから調べてみよ』と仰せられ、調べてみると、帳簿は乱雑をきわめ、相当の金をごまかし、大穴をあけていたのです。かれは全くトンダ白鼠だったわけで、それらの金はほとんど酒色に費やしていました。

 そんなことには、だれひとり気づく者はなかったのでしたが、一切部下に任せきりで、何もご存じないと思われた明主様だけは、お見通しでした。

 そして、当時あまり裕かでない財政であられたのに、それほど使い込んでいたかれを、いままでお咎めもなく、知らん顔して、他の人と変わらず扱っておいでになったとは、全く測り知れないお方と思ったことでありました。