明主様が、地方巡教を一番最初になさった時、名古屋から京都へお回りになり、その帰りの時にお供させていただこうと思って、明主様のお乗りの車両のところへご挨拶に行きました。
その時、明主様は管長さんとお話なさっておられました。お話が終わるまでと待っておりましたが、なかなか終わらないのです。そのうちベルが鳴り出しまして、汽車はすぐ出そうだし、ご挨拶はしたいし、黙って乗っても悪いように思ったものですから、私はモジモジしておりました。
そこへ二代様が顔を出され、「どうしたの」とおっしゃったものですから、「これからお供させていただきます」と言って、ふっと明主様の方を見ると、管長さんとのお話をおやめになったところで、汽車が動き出しそうなので、あわてて明主様に、「お供させていただきます」と言って、そのまま汽車に乗りました。
乗りましたら、すぐお側の女の子が来まして、「明主様がお呼びです。すぐ! すぐ!」と言われて、急いで明主様の特別室にお伺いしました。
すると明主様から、『おまえは順序を知っておるか』とお叱りいただいたのです。私は、「ハァ」と申したものの、何のことで叱られるのか判らないんです。
そうしたら、『奥さんは私のお供だぞ。奥さんに先に挨拶して、私にあとから挨拶するということがあるか。これから人を大勢指導していかなければならんのだから、これは厳しく言っておく』と、順序を守るということが、どれくらい大切なことかを厳しくお叱りいただきました。
私は、あの時の事情をお話したかったのですが、何も言えず、「ハーッ」と言いましたら、『よろしい』とそれですんだのですが、シューンとなって、寝台車に乗ったんですけど、とうとう熱海まで一睡もしませんでした。お叱りいただいたことが、それくらいに骨身にこたえただけに、それ以後は、何か体の中には、別なものが出来たような感じがして、御用に対する自信が出来ました。
いつも何か問題にぶつかった時、『順序が判らんか』とおっしゃられた時のお顔を、フッと思い出すと、そのものの運びをどうすればいいかということが、スーッと頭の中に出てくるというか、判ってくるので、あの時のご慈悲がその都度思い出されて、たまらなくありがたくなってくるのです。