岡田茂吉という名前を聞いただけでも、昔がなつかしく思い出されます。
私も美術学校の出身ですが、その美校の変わり種、岡田さんが、今日の偉業を達成された大きな熱情と人格に、私は敬意を表します。
岡田さんは、私よりも一年先輩であったと思いますが、美校時代のこと、日本画の荒木教授と西洋画の白浜教授と合同で、学生たちが玉川上流へ写生に同行したことがありましたが、その時岡田さんが、帰路の集合時間だというのに、じつと河原の石の上にうずくまったまま、水を眺めて集まってこないので、だれかが、「岡田先生、何やっとる」と呼んだことを思い出します。
当時フランスから帰朝されて、洋画界の権威者として有名でした岡田三郎助先生と同姓であるところから、岡田さんを〝先生〟と呼ぶニックネームがつけられていたのです。ニックネームとは申せ、若き日の岡田さんに対しての敬愛が偲ばれる呼び方だったと言えましょう。