せんべい一袋にも感謝して

 東京の宝山荘時代というのは、物資不足の時でしたから、魚一匹でも、乾物のひとつでもご献上させていただきますと、ほんとうにお喜びになっていただきま
した。

 それから箱根、熱海とお移りになってからも、誠をもってやらしていただけば、タバコ一箱でも喜んでお受取り下さいました。塩せんべい一袋でも喜んで、『あれはおいしかった』とおっしゃられるものですから、感激して、犠牲を払ってでも、何かお届けさせていただこうと、御用に喜びをもっておりました。