それから「ハワイ通信」ですが、今度の『栄光』に出ますが、中にちょっとおもしろいことがあります。これはアメリカ人で新しく信者になった人のことですが、その肝腎なところだけを読ませます。
(「ハワイ通信」(一八)朗読)
このときは英語教修なのです。約四〇名の聴講者があって、外人は一〇名ぐらいだそうですが、その中の一人なのです。
それから四、五日前に、例のグリリ夫妻が、駐留軍の機関紙で『星条旗』紙というのがありますが、その主筆の米国人を連れてきたのです。なかなか頭の良い人です。そのときは美術の話よりも宗教の話のほうが多いくらいでしたが、実によく分かるのです。その際グリリ氏の話ですが(箱根美術館はその日に見てきたのですが)、あれだけの美術品を集めるにはふつうは五〇年かかると言うのです。それで「どのくらいかかって集めたか」と言うから、「終戦後ボツボツ集めたが、本当に集まったのは正味三年ぐらいだ」と言うと、「どうしても信じられない、どういうわけだか聞かせてもらいたい」と言うから、私は「わけはないのだ、奇蹟で集まったのだ」と言ったところが、どうも分からないのです。それで「理屈はとにかく、分からなくても驚いた」と言うのです。「実にあり得べからざることだ」と言って驚嘆してました。それで私が「終戦後三年ぐらいだが、最初から言えば七、八年はかかっている。その集める最初のときというのは金はほとんどなかった。それから金が集まったのだ」という、それが不思議でしようがないのです。それで私は説明してやったのです。金が集まったということは病気が治るためだ。医者から見放されたり、命がないというのが助かったその感謝のために金を献<あ>げる、そういう金が集まって美術品を買えたという話をしたのです。そうしたら阿部さんが側にいて、なにしろ病気を治すといったところで、つまり治す力を信者になった人に与えた、とにかく治す人を作った。キリストがやったように一人対一人ではない、幾人にでもそういう力を与えられると言ったので、このことも驚いたのです。なにしろジャーナリストですから、偉い人やまた昔からの偉い事績をいろいろ知っているが、そういう人たちはみんな、自分はキリストや釈迦というような意味で、自分の資格とか、そういうことを話したり、知らされたりしたけれども、教祖はキリストやなにかより上だ。キリストや釈迦をずっと下に見ている人は、まだ一人も会ったことはないし聞いたことはない、ということは実に驚いたということを言ってました。今度、駐留軍の司令官の夫人を連れてくるから、会ってもらいたいというようなことを言ってましたから、いずれ来るでしょう。そういうようで、まだいろいろ話がありますが、とにかく米国のほうに早く分かりそうな具合です。ですからこれは逆輸入で、かえっておもしろいと思います。それについて少し書いてみました。
(御論文「迷信非迷信」朗読)〔「著述篇」第一二巻二七六-二七九頁〕