昭和二十九年一月三日御講話(3)

 それから熱海の地上天国もだんだんできてきましたが、メシヤ会館と水晶殿は秋として、美術館はそれができてからかかろうと思ってます。来年はできあがるだろうと思ってます。この美術館は、箱根の倍以上になります。そしてすべてが箱根で経験しましたから……あれは初め見本に造るということになってましたが……今度はいろいろな点もよく分かりました。今度は大いに充実した、新しい、とにかくアッとするような物をこしらえるつもりです。それで、箱根美術館だけでさえ、近ごろアメリカやヨーロッパの人たちにもだいぶ知れてきて、現についこの間フランスの大使とポルトガルの公使が、ぜび見たいと言ってきたのですが、とにかく閉館中で無理だからと言って断りましたが、そういうようなわけで、外人間にだいぶ知れてきたのです。それで、熱海ができたらいっそう注目されることになります。おそらく世界的の話題に上るだろうと思ってます。それらのことを考えると、とにかく神様の早さというのは驚くべきものです。去年来たアメリカの新聞記者でエリス・グリリという人は、美術評論家でなかなか有名だそうで、世界中の美術館を見て、箱根美術館と比べてみると、イタリアのヴァチカン宮殿は、宗教的で美術館になっているので、その点はちょうど救世教に似てます。それからフランスのルーヴルと、箱根美術館の、この三つが見た感じがだいたい同じようだというのです。それで私は驚いたのです。ヴァチカンとかルーヴルというのは世界的に有名なたいしたものなのです。それと箱根美術館が同じレベルに見られるということは、ずいぶんたいしたものだと思ったのです。ただ箱根美術館の特長は、美術館に入って美術品を見ながら、窓の外を見ると遠くに山が見える。だから自然美と人工美とであり、また庭はいろんな草木や岩の、自然のものを人間の芸術で巧みに表現したという特長は他では見られないと言って褒めました。その後主人公が来ましたが、この人はNHKの英語放送の主任ですが、その人は熱海の地上天国を見て、「実は書くつもりだったが、あまりに雄大なので書けない。しようがないから実地を見よということだけ書くつもりだ」と言って、そのくらい驚いてました。その人が言うには、この間も話したとおり、日本を東西に分けて西の京都、奈良が、古い、西における文化都市だ。そうすると箱根、熱海がすっかりできあがると、東における文化都市ということになる。しかも箱根、熱海は一時間で行ける、というくらいに接近しているということは非常に珍しい。そういうようなことを言って絶賛してました。ですから熱海の地上天国ができあがると、とにかく世界の注目を引くことになると思います。勿論日本でもいまさらのようにびっくりして「救世教のやつはなかなかなものだ。いままで馬鹿にしていたが、そうでもない。ずいぶんうまく儲けやがった」と言うかもしれません。なんでもよいから、とにかく、「ふつういろんな新宗教とは違う」「だいたい岡田という奴はあんがい腕のある奴だ」というようなことになり、一つの「岡田を研究する必要がある」というような空気になりやしないかと思います。岡田研究ということがいずれ出ます。そうすると、「まず奴を研究するには、奴の著書を一通り見なければならない」というので、そうなるとみんなで大いに救世教の本を読むということになり、そうすると医学や自然栽培のこと、だいたい医学ですが、そういうことがとにかくなんとなく分かってきますから、そこで『栄光』も『地上天国』なども、一つとって読もうということになり、これがたいへんなよいことなので、神様はずいぶんうまくやられると思ってます。この地上天国とか美術館というものは……安ッポイ言い方ですが、客呼びです。そうして、それによって本当のものを読ませる、頭に入れるというような政策を神様はとられたわけです。そういうようなわけで、「これだけのすばらしいものが短期間にできるということは、たいへんな金がいる。そういうような金がどうして集まったか」というと、「それは命がないような難病が治されるから、感謝のあまりどうしても金をあげる、そういう金が集まってこれだけのものができたのだから、いかにすばらしく病気が治るかということが分かるではないか」というように書きますから、「なるほどたしかに病気が治るに違いない」というその一つの理由になります。そういうようなわけで、箱根は規模が小さいが、熱海は規模が大きいのと、すべての点において世界中をアッとさせるような価値があるわけです。というのは、日本で言えば京都や奈良ほど広くはなく、狭くはあるが、鉛と金……と言ってはあまりに酷いが……銀と金くらいの差があり、こっちはいままでにない、いままで想像もつかないような物を造るのですから、そこに魅力があるわけです。それから日光はたしかにたいしたものですが、外国の人はあんまり注目しないのです。また日本でも、どっちかというと大衆向けです。芸術眼ではあまり価値がないわけです。ただ金をかけて立派に造ったというだけです。ですからどうしても奈良、京都と箱根、熱海ということになるわけです。ところが奈良、京都は一〇〇〇年以上たってます。京都は平安朝からですから八〇〇年ぐらいたってます。またヴァチカンにしても、ローマ時代にさかんになったのですから、とにかく中世紀以前ですから一〇〇〇年に近いです。東洋では支那の北京の紫禁城ですが、これも立派には違いないです……私は写真で見ましたが、紫禁城の全般を写した厚い大きな本があり、よくできてます。建物は非常に立派なものですが、庭園がないのです。ほとんど木がないと言ってもよいです。いずれ私がそこを経営するようなことになるでしょうから、そうしたらウンと木を植えるつもりです……それも何百年とたってます。ところが箱根、熱海の地上天国は、まず一〇年でしょう。本当に始めたのは、終戦の明くる年の昭和二一年ごろですから、再来年になってちょうど一〇年です。そのころには充分完成しますから、そうすると人間が一〇〇〇年かかったものを、こっちは一〇年でできるとすると、そのスピードは実に驚くべきものです。そういうわけで、つまり神様の経綸の早さというものには驚きます。

「『御教え集』三十号、岡田茂吉全集講話篇第十二巻p117~120」 昭和29年01月03日