昭和二十八年十二月十六日の御講話(1)算盤と正義感

一二月一六日                         

 いまの世の中を見ると、世界中が非常に正義感というものがなくなったのです。なんでも算盤《そろばん》ずくでやっているのです。理屈だけでは、こうやればこうなる、こうやるほうがよいということを、世界中、特に日本の政治でも経済でも、みんなそうなってます。ところがВ《いすか》の嘴《はし》と食い違いで、うまく行くことはないのです。特に政府の政策などがそうで、いろんな案を立てたり、いろんなことをしても、およそ結果は反対なのです。一番大きな違いは米作ですが、これなども、前の農林大臣の広川弘禅氏のときに、五ヵ年計画で三〇〇〇万円を出して三割増産をするという案を立てました。ところがその案に基づいてやり始めたようですが、今年のように馬鹿馬鹿しい違いさです。そういうような例が、貿易にしろ、いろいろなことに、みんな結果が反対なのです。その原因をよく見ると、一番の原因は算盤ばかりで正義感というものがない、そのためです。いまのは大きな話ですが、個人でも、うまく行かないということは正義感が足りないのです。ところが正義というものは、かえって算盤とは反対のほうが多いです。たいへん損のように思うことがあるのです。正義というものを守るということは、算盤に当てはまらないように見えますが、ところが結果においては、ずっと算盤に当たるのです。正義が算盤に当たるというと変ですが……。そこのところが理屈では分からないおもしろみのある点です。そのことを書いてみました。

(御論文「正義感」朗読)〔「著述篇」第二巻六八〇―六八三頁〕

▽次節に続く▽

「『御教え集』二十九号、岡田茂吉全集講話篇第十一巻p294~295」 昭和28年12月16日