昭和二十八年十二月十六日

十二月十六日

 いま問題になっているのは電産、炭労のストライキですが、あれは結局ソ連が糸を引いてやっているのです。その狙ったところはなかなかうまいものです。それは日本の再軍備をなかなか怖がっているので、それを妨害してやろうというのです。それには石炭と電気ですから、そこを狙っているのです。ですから賃金が少ないとか生活がどう、というのではないのです。とにかく炭労の賃金というのは非常にいいのです。だから少しくらいの賃金を上げろとか、そんなことは問題にしないのです。向こうの提出した賃金というのは倍ですから、そんな馬鹿げた上げ方というのは、できるものではありません。最初にできない相談を出しておいて、言ったとおりを一歩も譲らないというところをみても、日本の生産を妨害してやろうという意図がありありと分かるのです。そこで考えてみなければならないのは、どうしてソ連が日本の軍備に対して邪魔をしなければならないかというと、これは分かりきった話なので、日本を軍事的にやっつけようという腹があるからです。つまり武力をもって日本を侵略しようというそのときに、日本の軍備ができるだけ少ないほうが楽ですから、日本にできるだけ軍備をさせないように邪魔しているというわけです。ですから将来日本に対して武力侵略をするということは分かりきってます。ですからいまストライキをやっている人というのは、つまり日本の国民よりもソ連の国民になりたいという望みなのです。そうするとこれが難しいので、われわれは人間がほとんど機械のように扱われているソ連の政治のもとに、というのはいやです。しかし労働者のほうは、たいして違いはないのです。ソ連の政治になっても、やはり働いただけの賃金はくれるのです。そうして、日本のように大いに儲けて贅沢するというような奴がなくなる、そうすればオレたちは働いていても気持ちがいい、というわけです。ですから労働者階級はあえてソ連の政治になっても、さほど苦しみはないのです。あるいは現在よりもよいかもしれない、という考えがあるのではないかと思うのです。さもなければ人間はどんなものでも、自分の不利益になり、自分がいままでよりか悪くなる生活とか待遇を欲するわけはありません。ところがああしたストライキをして邪魔して、日本国民を脱却してソ連の国民になりたいということは、日本国民でいるよりかどこかよいと思うからです。そこを考えなければなりません。ところが労働者以外の一般国民は、日本国民のほうがいいというので、それを取り締まろうとしているのです。ところがソ連の植民地になるよりか日本が独立しているほうがよい、というほうがずっと多いのです。ですからこの間の総選挙でも共産党は一人も出なかったのです。あれをもってみても、日本人は日本の国民のほうがいいという人がずっと多いのです。それでソ連の国民になりたいというほうはずっと少ないのです。そこであれほど一生懸命に命がけで共産党が活動していてもさっぱり増えないのです。それで少数の人間が、できるだけ邪魔してやれというのです。それにはまず第一に生産を邪魔して、日本をソ連が将来武力侵略をするのに都合のいいような国にしたいというだけなので、成功するしないは別としても極力それを一生懸命にやっているわけです。そういうように考えてみるとよく分かります。それでなければ七〇日以上もああして頑張っているということが分かりません。自分たちでも賃金はわずかしかもらってないから、ほとんど食うや食わずで悲惨な生活をしているのですから、それでもああしてやっているというのは、日本を早くソ連の植民地にしたいという念願でやっているのです。おかしな話ですが、しかしその人たちは命がけでやっているのです。そうすると将来武力侵略という危険があるとすれば、日本はどうすればいいかというと、やはり経済の許す限りは、ある程度までの軍備をしなければならないということになるわけです。そうするとそのために政府は、警察予備隊を保安隊にしましたが、ああして着々と軍備を作りつつあるのです。だからそれに反対する側は、いま言う労働者階級、つまり共産階級です。それは絶対に反対する。しかしこれは少数です。それからあとは女子供、つまり自分の家族がこの間の戦争でコリゴリしたというために、大局や先のことは考えないでただ目先だけで、兵隊にとられたり戦に行っては困る、というごく低級な人たちが反対するというわけです。しかし反対するほうは女が多いのですから、そこで憲法改正もなかなかできないのです。改進党あたりが憲法を改正して堂々と軍備をやったらいいだろうということをしきりに言ってますが、憲法を改正するには国民の半数を得なければならない。ところが頭数からいうと女のほうが多いくらいですから、憲法改正が成立するかしないかあぶないので、政府も憲法改正の挙に出ないということは、そういう懸念があるからです。そこで政府としてもなかなか難しいのです。だから機が熟して国民の世論がそこまでいくまではやれない、ということを吉田首相も言ってますが、それよりほかにしようがないでしょう。日本としてはそういうようです。それからアメリカとしては日本が一番肝腎なのです。日本がやられたらアジアは共産国家になってしまいますから、どうしても日本だけは急所なのです。ソ連の側のほうに行ってはいけないというので、いろいろな援助をしているのです。しかしそれに対して今度アイクが朝鮮に行って視察しましたが、結局グズグズしていてはいつまで経ってもきりがないし、片がつかないので、うんと強硬にやっつけてしまおうという考えです。そうかといって戦線を拡げるということは、ヨーロッパ、特に英国あたりは嫌うのです。そこでそれを拡げないで息の根を止めようというので、これはなかなか難しいのです。それでいまだいたい新聞やなにかで知れている点では、現在の戦線は東西二二〇キロあります。それをもう一歩進むと、一番狭い所はだいたい一〇〇キロくらいの戦線ですむのです。そうすると警備の兵隊がよほど少なく、半分くらいですみますから、そこまで進出しようというのですが、これは分かりません。というのは、二、三日中にマッカーサー元帥を呼んでアイクと会談することになってますが、その結果どういうことになるか分かりません。とにかくいまのところ強硬な手段によって息の根を止めるということだけは腹ができているわけです。そういうように計画どおりいくかどうか分かりません。中共やソ連の尻押しから考えても、なかなかそう簡単にいくわけはないのですから、あるいはかなり激しい大きな戦争になるかも分からない。しかし第三次戦争は起らないでしょう。というのは、いま起してもソ連のほうに勝ち目がないのです。それで結局第三次戦争が起らない程度の極限されたもので、転がったところで中国という程度でしょう。アメリカのほうはできるだけ中国のほうに拡げない計画ですが、しかし成り行きによっては中国全土に拡がるかも分からない。というのは、神様のほうでそろそろ中国に救いの手を出し始めてます。それには宗教の宣伝が自由にできるような状態にならなければならない。その見本として日本が終戦前は宗教宣伝をすることができなかったのです。特に私らは終戦前ときたら、まるっきり手が出なかった。その時分は観音様を拝ませましたが、観音様と天皇陛下とどっちがありがたい、とくるのです。観音様を拝むなら天皇陛下を拝めというわけです。病気がなおったら、観音様でなおったのではない、天皇の御稜威<みいつ>だ、という行き方ですから、それでは御真影でもお祀りするよりしようがありません。それも昔からある阿弥陀さんとかお釈迦さんは許されているのです。そこで前に日蓮宗のお曼陀羅に、天照大御神様は下のほうに小さく書いてあって、春日明神、上のほうには大広目天など、と大きく書いてありますが、それは非常に不敬であると訴えた人があります。その判決が、「そういう理屈からいくと、たしかに不敬だ、しかしいままで何百年もの間そうやっていて別に差し支えなかったからよい」ということだった。ですから古いのはいいので新しいのはいけないのです。そこで神様は戦争をやらせて、日本が負けるようにして民主国家にして、われわれのほうで宗教宣伝のやりよいような国家にしたのです。こういうところは神様は実にうまいものです。また徹底した大きなやり方です。そこで民主国家になったためにわれわれは大いに宗教宣伝ができたのです。そうしてこのとおり発展してきたわけです。それでこれを考えてみると、中国もそういうふうにならなければならないのです。ところがいまの中共政府はぜんぜん宗教禁止です。そこでいずれ中共はアメリカに頭を下げて、信教の自由ということになるのです。そこでアメリカに降参するということは、アメリカに武力で大いにやられるということになります。そうすると今度アイクが始めるとすると、結局支那全土に拡がっていって中共がめちゃめちゃにやられて、しかしそれでもソ連は援助しません。スターリンはもっと利巧ですから傍観しているでしょう。最初は条約によってある程度の援助はするでしょうが、第三次戦争は起らないでしょう。それで中共がやっつけられるのです。そうなってから、われわれのほうでも大いに中国の救いをやるわけです。それについて最近紅卍字会<こうまんじかい>が援助を申し込んできたので、こっちも承知し、援助はするがいまのところはまだ時期が早いからもう三年待て、しかしそれまではつなぎ程度の援助はする、と言ってやりました。たぶんそうなるでしょう。紅卍字会のほうはもうしようがないのです。前に天津に本部があって、満州方面でそうとう発展していたのです。ところが中共政府になってから、命カラガラ台湾に逃げたのです。中には幹部の者で命までとられたのがあります。それで台湾に逃げて形ばかりの本部を作ってやっているようです。ところが台湾に行っても、蒋介石の政府のほうでは援助どころでなく邪魔しているのです。なぜというと蒋介石のほうは、アメリカの援助によってとにかくああしていられるのです。そうするとキリスト教でなければ駄目なのです。だから偉方のうちにそうとうキリスト教信者もあるようです。第一宋美齢<そうびれい>もキリスト教の熱心な信者です。そういうようで他の信仰は極力活動できないように、弾圧するほどではないが虐待しているわけです。そういうようで紅卍字会もしようがないし、また扶<フーチ>に日本の新宗教と提携しろということが出たので来るわけですが、日本の新宗教で力のあるのと、紅卍字会をよく知っていることですが、一時大本教では紅卍字会とは提携しましたから分かっているのです。一時は私も紅卍字会の会員になって、大きなメダルをもらって下げていたことがあります。それで紅卍字会の日本総本部ということをぜひ心配してもらいたいというので、小田原の別院にちょうど適当な棟がありますから、そこでやらせようと思ってます。紅卍字会というのはいずれ詳しく話しますが、扶というのは非常におもしろいのです。なにしろ神様がおっしゃることがすぐ字で書けるのです。それは非常に興味があって、神様のあることが手にとるように目の前で分かるのです。ですから日本のインテリなどがずいぶん来ると思います。神様のそういった仕組みなのです。これは来春からやるようになると思います。それでこっちの宣伝にも非常に役に立つと思います。話はそのくらいにしておきます。

 それについてストライキのほうのことを今度の『栄光』に出すべく書きましたが、それを読ませます。

(御論文「信仰とストライキ」朗読)

〔「著述篇」第一〇巻七二〇―七二三頁〕

 つぎはちょっとおもしろく書いたのです。いまの人間は壊れ物扱いにされていて、実に弱いという意味のことをいろいろな面からみて書いたのです。

(御論文「本教信者の幸福」朗読)

〔「著述篇」第一〇巻七二七―七三〇頁〕

「昭和二十八年十二月十六日」 昭和28年12月16日