昭和二十八年十一月二十七日

十一月二七日

 『アメリカを救う』という本は、日本文だけは来月できる順序になってます。表紙だけ作ってみたのですが、こういうのです。馬鹿に派手なものですが、言わばいままでは夜の星の世界です。月が引っ込んで星だけになっているのを、いよいよ太陽が出始めたわけです。つまりアメリカは夜の世界の代表者ですが、いよいよ日が出て、だんだんアメリカがなくなるわけではなく、アメリカ式が、アメリカ全部が日の光になってくるわけです。これは、そのアメリカを救う第一歩です。それで今度樋口さんがハワイに支部を作って、来月の末に行くことになってます。それからロサンゼルスにもいくらか信者ができてきましたし、来てくれという要求が非常にあるのです。それで画家の嵐さんという人が最初行くつもりです。立松文二さんも行くでしょう。それについて、この本を持って行くと非常に具合が良いので、そうしてこれを大いにあっちに弘めるつもりです。つまりいままでにこういう本は出たことがないから、アメリカでも非常に問題になるだろうと思います。あんがいあっちで売れるかもしれないと思う。つまり売れれば売れるほど人が読みますし、それからおおげさに言うと外貨獲得にもなります。何十万部と売れるようになるとなかなか大きいです。一〇〇万部売れるとすると一億ばかりになります。あっちにはもっと高く売りますから、二、三億の外貨獲得ができるわけです。それからその次はヨーロッパのほうに弘まるわけです。昨日フランスから、一人は在ドイツのフランス人、一人はフランスにいるフランス人で、病気を治してもらいたいという手紙が来ました。何時か『栄光』にも出しましたが、フランスの有力な雑誌『パリ・マッチ』の編集長のカルティエさんが来て、箱根でいろいろ話をした、その談話をその雑誌に載せたのです。それを見て、一人は目が悪い人で一人は胃が悪い人で、ぜひ治してもらいたいとていねいな手紙が来たのです。無論フランス語で、それを訳したところが、読んでみてあんまり熱心に書いてあるので心を動かされるくらいなので、御守りだけ送ってやりました。それから養生法やそういうことも精しく書いて返事を出すようにしておきました。これからヨーロッパに『栄光』新聞なども少し多く送ってやるようにしました。これはヨーロッパに行く最初の種です。二粒の種を播くわけです。そんなわけですから来年あたりになると、あっちのほうもそうとう動いてくると思ってます。それで日本文のほうは無論各大臣、国会議員、新聞社、大病院、そういう方面に配るつもりです。新聞広告も一通り出そうと思ってます。だからそうとう問題になるだろうと思います。とにかく医学の間違いをかなり思いきって暴露してありますから、本当だとすれば医学上の大問題となるし、もし本当でないとすれば、岡田という奴はけしからん、やっつけてしまわなければならない、というどっちかです。まるで決闘みたいなものです。敵を斬るかこっちが斬られるかというどっちかでしょう。ところがこっちが負けることは絶対にありません。向こうが嘘なのです。向こうはなまくらですが、こっちは正宗を持っているのですから、脳天なしわりというやつです。そうすればたしかに問題になりますから、そうなるとこの本を買わないわけにはいかないから、チャタレー夫人よりかもっと売れるだろうと思ってます。外貨獲得ばかりでなく内貸獲得もしたいと思います。いずれにしてもおもしろいと思います。

 『アメリカを救う』の結論はまだ読んでませんが、結論もかなり徹底してますからいま読ませてみます。

(御論文『アメリカを救う』「結論」朗読)

〔「著述篇」第一一巻四〇―四二頁〕

 この間アメリカに三〇年もいる人と会っての話によると、今年のオリンピックの競技でアメリカもだいぶ活躍して良いレコードをつくったようですが、よく調べてみるとほとんど黒人の血が混っている選手だそうです。ですから、若い時分から医学衛生を大いに守った白人のほうが弱ってきて、黒人としたら近ごろはいくらか西洋医学のお蔭ではなく、被害をこうむったかもしれないが、以前としたら一番医学の害をこうむっていないと見なければならない。そのほうはそんなに丈夫です。この間もニュース映画を見ると、マラソンでも黒人の早いことは、まるで桁が違います。それからボクシングとかもものすごいです。そんなようでだんだん白人のほうが弱ってくるのです。それから、これもこの間なにかで聞いたのですが、ヨーロッパのほうに行った話ですか書いたものですかで、英、仏の人間ときたら、ぜんぜん話にならないそうです。まるでただ安易な生活だけを望んで活動力などはないそうです。それのなによりの証拠は、英国は相変わらず労働党が勢力がありますが、あれは社会主義政策をモットーとしてますが、つまり社会主義というものは、働く奴も働かない奴もたいして違いがないように国家が扱うことです。だから仕事の嫌いな、なまけるのが好きな人間には一番良いのです。英国の政治などが、災害保険とか健康保険とか失業保険。それからいろんな養老院とか、そういうような制度は非常に完備しているのです。だから優勝劣敗が非常に少なくなってくる。ところがアメリカはまだそれだけ元気がありますから、大いに優勝劣敗が激しいのであれほど進歩するのです。というその原因というのは医学のためです。特に種痘のためなのです。今度の『アメリカを救う』の本にも種痘について精しく書いておきました。そんなようで、種痘は英国が本元で、それからフランスにいったのです。それで種痘によって身体が弱り、弱ったのを良くしようという手段がまた弱らせる原因になるのです。ですからだんだん弱ってしまって、ヨーロッパの国の元気というのがなくなったのです。ですからそうなると、ただ安易をむさぼるだけに汲々としてます。だから中共ができたときに、アメリカは絶対に承認しないというのを、英国が最初に承認したのです。あれはたいへんな失敗でチャーチルなどはたいへん困っているようです。そうなると正義という観念がごく薄くなるのです。私もときどき思ったのですが、つまり中共が後押しして北鮮軍が南鮮に侵略してきたのです。それから中共が蒋介石のほうを押し込めてしまって占領してから、まだやっと一、二年経つか経たないうちに政府をこしらえて、それを承認するということは、ぜんぜん戦国時代と同じようなやり方です。だから強い奴がそこを占領してしまったら、すぐにその政府を世界が承認してしまうということになると、ほとんど文明ではないので、暴力で強い者勝ち的なことを承認するということは絶対許せないことです。それだからアメリカは絶対に許さないというのを、英国は真っ先に許したのです。そういうことの原因はどこにあるかということは、国民の元気が弱っているのです。こっちさえ安全なら良いというのは、だいたいなににあるかというと、香港を脅かされるために、もし香港からしめ出しをくったら英国の支那貿易は大打撃を受けますから、そうすると英国の財政を保てないというのが一番の原因だったらしいですが、実に哀れはかない国になってしまったのです。そういうように国民の元気がなくなったということは、やはり医学の進歩によって体力が弱ったのです。だから今度のオリンピックの選手にしろ、英、仏からはほとんどなかったです。米国、ソ連、あとは小国です。日本もあやしくなってしまいました。そんなようで実にお話にならないのです。それでまだ元気のあるのは米国ですから、米国が英、仏と同じようになったら、それこそソ連に良いようにされてしまいますから、米国の国民の元気を英、仏的にしないようにするのが世界平和において一番重要な問題です。それでこの『アメリカを救う』ということはその意味なのです。そうして結局ソ連のほうはそうとう医学は採り入れているが、贅沢をさせないのです。食物もまずい物を食わしているから元気がおとろえないのです。うまい物を食って贅沢をして薬をやっていては弱るばかりなのです。それでソ連は良いのですが、米国が弱ったら世界中がソ連にやられてしまいますから、米国をどうしても救わなければならないという意味がこの本を書いたというわけです。

 それから近ごろの傾向は、新宗教における病気治しということはそうとう認めてきました。しかしどういうような認め方かというと、精神的に病気を治す、つまり宗教的に神仏というものを信じて、その心の慰安によって非常に影響する、それで病気が治る、というような考え方です。ですから肉体は医者で治し、精神は宗教で治す。それで両々相まってやるのが理想的医学だ、というような説を唱えてきましたが、これはとんでもない間違いです。それはいまのインテリが考えそうなことですが、その医学そのものが肉体を治すというのが、とんでもない間違いです。それについて書いてみました。

(御論文「医学療法と信仰療法」朗読)

〔「著述篇」第一〇巻七一二―七一五頁〕

 私はずいぶん酷く書くのですが、これをなにか苦情言ってくるかと思っているのですが、言ってこないのです。だからやっぱりお腹の中では、医学は駄目だというような考えもだいぶあるらしいと思うのです。なるほどこれには違いない。しかしいまさらそうなったら、第一自分はメシが食えない。それからたいへんな問題になる。まあ面倒臭いからしようがないというくらいだろうと思ってます。しかし自分だけの問題だったらそれで良いですが、そのためにいかに多くの人が被害をこうむって命までなくしているのですから、これ以上重大なことはありません。それからもしまた、「けしからん、これだけの進歩した医学をこれだけ酷くいってけしからん」と言って戦ってくるくらいなら、たしかに自分たちも医学を信じているのだが、そういう人はないのだから、やっぱり御説御尤<ごもっとも>と思っているに違いないです。そうならば自分たちのほうで、そういった意味でも発憤して大いになんとかしなければならないのだから、そこでこれを有名なお医者さんや大病院に配れば読みますから、読んでどういう考えを起すか、どういう態度をとるかということを、おもしろいといってはおかしいですが、黙ってはいないでしょうが、それをこっちは待つつもりです。そういうようで結局において、どっちに旗を挙げるかというところにいくわけです。これは以前から私はそういう考えを持っていたのですが、やっぱり時期が来なければ、うっかりやってやりにくくなっては困ると思って機会を待っていたところが、やっとこの機会が来たわけです。それでまたアメリカに向かってやるのですから、日本の医学のほうではちょっと拳骨<げんこつ>を固められないと思うのです。やっぱり神様はなかなかうまいですから、こういう具合にされたわけです。それでまたアメリカがあんがい分かるかもしれませんが、アメリカが分かれば日本は分かります。それは舶来崇拝民族ですから、とにかくこの反響はそうとう興味があると思います。

 それから愛国心ということが、いまだいぶ問題になってますが、それについて書いてみたのです。

(御論文「新しい愛国心」朗読)

〔「著述篇」第一〇巻七〇六―七〇八頁〕

「昭和二十八年十一月二十七日」 昭和28年11月27日