▽前節から続く▽
それと、一つは宗教的に行くのですから、ある程度は最初から変な目で見ることはないです。アメリカの一部にはだいぶ救世教ということに関心を持ってきて、つまり有識階級の人たちが私に会いたいというような話もあります。それで一昨日来た『ニッポン・タイムズ』の記者なども、自分は日本に四年いるけれども、あなたのような意見の人は日本人には一人もない、自分も非常に共鳴するということを言って、非常に褒めてました。というのは、一つは私がだいたいアメリカ人に似ていて、日本人離れがしているので、アメリカ人にはピタッとゆくのです。だいたい美術評論家なので美術に対する眼識は日本人にもないくらいよく分かります。私も感心したくらいです。それでこういうことを言っていました。自分は世界のあらゆる美術館を見た。なるほど立派な物もすばらしい物もあるが、ただそれだけであって箱根美術館みたいに、いろいろな自然の風景とか草木、石類を調和して、一つのああいった雰囲気というものの作られている所は一つもない。それについて自分は実に打たれる。あそこにいるとどうしても去ることができなかった、と言うのです。一昨日来たのですが、時間がないのでとうとう思いきって帰ったというくらいで、あれほどの美術館というのは実にすばらしい物だと言って感心してました。今度は主人を連れて熱海のほうも見るつもりだそうです。
それから宗教のほうにもなかなか関心を持っていて、宗教の話もずいぶんしましたが、なかなかの見識があります。そこで、これからアメリカ人の偉い人を連れてくるからよいかと言うので、結構だから、いつでも私は万障繰り合わして会うからと約束をしました。そういうような具合で、ぜんぜん日本人と違って非常に分かりよいのです。宗教のことなども実に分かるのです。というのは、どの点が私と一番一致するかというと、現実主義なことです。その仕事が形に現われる結果ということに一番重きをおくのです。それからこういうことも言ってました。すなわち、日本人は明治天皇を非常に偉いとして崇拝している。しかし自分から見れば明治天皇は、軍人をたくさん作ったことと、武器を大いに作ったというそれだけではないか、だから平和に対することは別にたいしてやってないではないか、ということを言ってましたが、これもアメリカ式の現実主義です。ですから私は、宗教も拝んだり太鼓叩いたりするということは別に意味がない。それよりか病気が治るとか幸福になるとか、悪人が善人になるとか、本当に現実に現われる、それだけが宗教の価値だと考えてます。アメリカ式の考え方もそれですから、そこで話がよく合うのです。ところが日本人の一番悪いのはその点にあります。事実を無視することです。たとえてみれば、今度の『救世教奇蹟集』にしても、『読売』は出しましたが、『朝日』『毎日』は広告を出さないのです。つまり私の言うことが、あまり意表に出るので、いままでの宗教の言い方や説とは違うから、そこで恐れをなしたのだろうと思います。しかし一般ジャーナリストは、「医学のイの字も知らない、おまけに新興宗教で、近ごろニョキニョキと頭を出したくせに、コンナ大それた」ということで、事実を見ないで、ただそういったような理屈にならない理屈をつけて、そうして自分ではそれが良いと思っているのでしょうが、そういった現在です。ですからこれがアメリカ式にゆくと、なにがなんでも、とにかく何者がこういうことをしても、事実医学よりもよく病気が治ればよいではないか、それを取りあげるのがよいという考え方です。そこにアメリカがああいう立派な国になる根本があるのです。日本は、島国根性が抜けきれないで小乗的になってしまうのです。それがなんにでも現われてます。話は違うが、いまもって芝居やラジオで『忠臣蔵』をやってますが、これも日本人のいまもって囚《とら》われた島国根性から抜けきれない証拠です。ですから『忠臣蔵』で、一生涯を犠牲にして自分の殿様の仇をうつというのですが、そういうような考え方として、結果はいったい日本人の幸福に対してどれだけの役に立つかということを言いたいのです。もし役立つとすると、その当時の権力者、大名などに対する忠義ということは、その大名が権力を維持するうえにおいての一つの手段です。それがために一般民衆はなんにもならないので、少しも幸福の役に立つわけではないので、それをたいしたように思い、また思っている考えがあるので、それだから興行師がそういう物を扱うようになるのです。ですからいまの本当の民主主義の思想と、くい違いもはなはだしいです。日本人のこういった小さな思想を、もっと世界的に人類愛的に拡げるのが一番必要なわけです。そこで宗教も、ただ日本人だけを信仰させるというのでは、およそこれからの世界とは違っているわけです。世界救世教として、一番にアメリカ人を救おうと思ってます。そうすれば、世界を天国の世にするにはこれが一番効果的であるし、手っ取り早いです。神様は勿論その御心なのです。
△御講話おわり△