昭和二十八年十一月二十六日の御講話(1)

一一月二六日

 ついこの間、日展を見ましたが、それについて感想を書いてみたので読ませます。

(御論文「日展を観て」朗読)〔「著述篇」第一一巻六六一―六六四頁〕

 つまり根本のまた根本の原因は、日本人がその自覚がないのです。ということは、白人よりも劣っていると思っているのです。だからなんでも西洋でできた物ならよい、西洋人は偉いと思っているのですが、これがたいへんな間違いです。私はこのことも大いに言ったり書いたりしようと思ったのですが、これは終戦以前まではいろいろ書いたりしてました。私の『明日《みょうにち》の医術』に書いてありますが、英国は月、米国は星、日本は日ということを書いたことがありますが、これも終戦後進駐軍が来てから、それを密告した者があるのです。しかしいいあんばいに、そういうことはなくてすみました。そういうような具合で、日本人にそういうことを教えたいと思っていたのですが、なにしろ占領中はそういうことは言えないから黙っていたのです。もう講和になった以上言えるから言うようなものの、実際日本人のほうが白人よりも劣るというこの考えが、たいへんに間違っているのです。これは日本人は世界一なのです。まったく、日の本と言って、日の民族なのです。要するに太陽系民族です。つまり月の系統の民族が白人なのです。ちょうど、いわば金と銀です。ですからテンデ比較にならないのです。そのために私は『アメリカを救う』という本を出したのです。日本人は劣等感がありますから、あれをたいへんに大胆な、トビ上がったように見た人があるようですが、それを知らないからです。日本人は太陽系ですから、昼間の人種です。夜の民族を救うのはあたりまえで、少しの不思議はないのです。値打ちが違うのです。つまり金の値打ちと銀の値打ちの違いです。そういうようなわけで、芸術も日本人のほうがずっと上なのです。だから日本人が油絵をまねするということは、とんでもない間違いです。これはかえって外国人のほうがよく知ってます。現代の日本画は外人はハナにもかけません。日本画と言えば、古い時代というほどのこともないが、油絵風にならないときの画は、大いに買いもするし認めていたのですが、いまの洋画風になってからは、ぜんぜん見向きもしないです。それでいてそれに気がつかないのです。それでこの間展覧会に行ったときに、いったいこういう画は売れるのですかと、そのほうのことを知っている人に聞いたところが、売れないと言うのです。いったいどうするのかと言ったところが、これはいろいろな会社の応接間とかなにかに頼んで掛けてもらって、そうして絵の具代としてお礼をもらうというぐらいのもので、ほとんど収入というものはないのです。第一アンナ物は買い手がないです。いっそ油絵ならよいですが、日本画は馬鹿デカイのです。ふつうの家で買っても、床の間に掛けるわけにもゆかないし、屏風のようなものです。ですから宝の持ち腐れになってしまいます。私などは、くれると言ってもいりません。それがウンと出ているのです。そのウンと出た何分の一が入選したのですが、私は見て気の毒でしようがないのです。その絹とか絵の具代というのはたいへんなものでしょうが、もったいない話です。それでそれを画く間、暇をつぶすのですから、生活費とかそういうことを考えたら、あのくらいな浪費はないと思います。これは本当は止めたほうが、国家のためにどのくらい利益になるか分かりません。なんにもならないことをしているのです。それは日本画の良い絵なら日本人を楽しませることもできるし、外国にも出すことができますが、これでは日本人を楽しませることはできないし、外人は見向きもしないです。いま国家において一番無駄なものはそういう人たちでしょう。それと病人を大事にしろ、肺病などは安静にして何年も寝ていろという、これもずいぶん不生産です。だから日本が貧乏になるのはあたりまえです。いま日本人ぐらい貧乏になる条件を備えている民族はないと思います。

▽次節に続く▽

「『御教え集』二十八号、岡田茂吉全集講話篇第十一巻p256~258」 昭和28年11月26日