昭和二十八年十月二十五日の御講話(1)

 一〇月二五日

 自然農法の「特集号」を出そうと思ってます。いつも春ですが、今年は報告も早く来ましたし、なにしろこの凶作に対してみんな非常な不安を抱いてますから、少しも早く安心させるようにしてやりたいと思って早く出すのです。来月初めの『栄光』の「特集号」として出します。それについて今年は世間は馬鹿に悪くて、こっちの成績は馬鹿に良いという、おそろしく離れてしまったわけですが、やっぱり神様がうまくやられたわけです。いま「特集号」の論文を読ませますが、これはいままでとよほど違うということは、いままでよりも徹底して書いてありますから、これが出たら、農村方面に関係のある人たちに一枚売りをするとよいと思います。私の予想では一〇〇万は大丈夫だと思ってます。とにかく信者の人で五〇万は堅いですから、あとを売るとしても、なにしろ標題が大きく「日本農業の大革命」とし、それから「無肥料で初年度から五割増産」というのですから、ボタモチでホッペタを叩<たた>くような題です。そうして一人でも多く読ませようと思いますから、なるだけ安いほうが手が出しよいですし、おまけに農民の懐具合は馬鹿に悪いのですから、なるべく安く多く出して読ませたいと思います。そうしてこの題を見ただけで飛びつくだろうと思います。それからまた各地で講演会や座談会をやるときにこれを売れば、非常に早くみんなに分かるというわけです。
                                
 (御論文「日本農業<農法>の大革命 無肥料で初年度から五割増産<一割乃至五割増産>」朗読)〔「著述篇」第一二巻一九五ー二〇三頁〕

 昨日か一昨日の新聞にも出てましたが、あんまり酷いので自殺をした農民がありました。これはまだ新聞に出ない自殺者がだいぶあるらしいです。そういうわけで、今度の酷いできばえに対して、いまいろんな対策をねってますが、しかし対策をねったところで良い案は出ようがないのですから、しようがありません。それで百姓は百姓で、枯れた穂みたいな物を当局に見せて、税金を負けてもらうとか供出を減らしてもらうとかやっているようで、実に方法がないわけです。今年はそれでなんとか外米の輸入もありますから持ちますが、来年はこれを挽回する確信があるかというと、その確信はないので、やはり天候に任せるよりないのです。ですから、つまり天候が悪くても、風水害があっても、冷害があっても、ビクともしないという稲を作ればよいのですが、その方法を知らないのです。ちょうど人間で言うと黴菌が入ってもなんでもない、起こらないという強硬な人間になればよいのです。救世教信者のように、結核なんかなんでもない、伝染病結構、早く赤痢になりたいというくらいなものです。ですから日本の土地もそういうふうにすればよいのです。しかし薬で人間の体を弱らしているように、肥料で国土を弱らしているのですが、実にはっきりしてます。もっとも私がこれを発見した動機は薬毒からです。ですから来年以後はどうすればよいかということですが、外米の輸入ということは、日本の経済上たいへんです。いまでも輸入超過で困っているのですから、そのうえ米を買うとしたらたいへんです。今年などの輸入代金は二〇〇〇億では足りないでしょう。結局三〇〇〇億近くになるでしょう。それだけの金を出すとしたら、いくら稼いでも追いつきません。しかも輸入代金だけでなく、農村の間接的の損害がたいしたものです。労力の損害は勿論ですが、水害による田の荒れ方もたいへんです。この間の報告でおもしろいのがありました。三重県のほうですか、高潮のために海水を被った田地ですが、他の田地は全部駄目になったが、その中に自然栽培の田地だけが被害を受けないで、元通りに青くあたりまえになっているというのです。ですからそれを見た付近の農民は初めて目が覚めたというのですが、実にはっきりしてます。それと、根が固く、張っているから浮かないのです。これはやった人は分かりますが、根が長く毛根がたくさんあります。それから土が強いのです。つまり根をギューッと固めているのです。これもやっぱり人間とよく似てます。人間でも、薬を使わない人間は怪我して血が出てもすぐに締まって血が止まるのです。薬毒がたくさん入っているのは怪我でもして血が出るとなかなか止まらないのですが、これは稲とよく似てます。そういうような具合で、肥毒により稲も土もいっさいをみんな弱らしているのです。自然農法のほうは今年は馬鹿に良くできて、一般のほうは馬鹿に悪いということは、神様が「これでも分からないか」というような思いきったやり方をされたということは、非常に結構なのです。今年の凶作というのは自然農法を知るうえにおいてのたいへん結構な話です。悪いのは一年で、あと気がつけば永久に良くなるのです。そのために兵庫県とか三重県、岐阜県とかはすばらしいもので、見学に来る人が毎日押すな押すなだそうです。ですから会員などもドンドン増えてます。ですからこれが二、三年たったらどんなことになるか分からないくらいです。実に日本開闢<かいびゃく>以来ない大きな救いでしょう。

 それからこういう報告が来ましたが、非常におもしろいです。稲のほうでなく、米ですが、無肥料の米は虫がつかないのです。写真までつけてきてますが、いま読ませます。

 (御論文「人体と肥毒」朗読)
 (寄書朗読)〔「著述篇」補巻三、六九二ー六九四頁〕

 これで見ても、米になってからも肥毒の恐ろしいことが分かります。これにも書いてあるとおり、病気の原因もこういうことが大いにあるのです。だからまったくいまの人間は「超愚」です。

▽次節に続く▽

「『御教え集』二十七号、岡田茂吉全集講話篇第十一巻p179」 昭和28年10月25日