それからこの前「結核は肩が肝腎だ」ということを言いましたが、これは結核ばかりでなく、心臓病、胃にも非常によいです。心臓病の人は必ず左の肩が凝ってます。それが少しずつ溶けて心臓の付近に垂れて固まるのです。それが因<もと>ですから、心臓病の人は左の肩が一番肝腎です。それから胃の悪い人、特に消化不良にはすばらしい効果があります。胃をやるよりか、かえって肩を柔らかくしたほうがよいのです。それからみんな頸のまわりに固まりがあります。これがいろんな病気の原因になりますが、これはいったん肩に固まったものが頸のほうへ行くのですから、肩をやると頸のまわりの固まりも非常に溶けやすくなります。ですから肩こそあらゆる病気の急所です。ただし中風だけは駄目です。中風の人はかえって肩が柔らかいのです。健康な人ほど中風は起るものです。弱い人には起らないものです。健康でかっぷくの良い脂ぎった人に起るものです。そういう人は体の毒が、肩を通り越して頸に集まるのです。それで肩が柔らかいから非常に健康なのです。その代わり頸に固まるから、それが溶けて脳の中にはいって行くのです。だから中風の人は頸と後頭部の右か左にコブみたいな固まりがありますから、それさえ溶かせば必ず治ります。それで一番肝腎なことは、ウンと固ければ固いほど力を入れてはいけません。ところが固いと固いほど溶かそうとするのに力を入れてしまうのです。だから溶けないのです。これは溶けないなと思うときは必ず力がはいっているのです。だから力は、ほんのあるかなしかくらいで、はいっているかいないか分からないくらいにフワフワとやるのです。そうして想念だけは強く通す気持ちですればよいのです。力を抜くとずっと治るのです。そういう具合で、肩を柔らかくするということが一番の急所だと思っていればよいです。それから熱ですが、頭やほうぼうにある熱も肩をやるとたいていは下がります。だから健康診断をみるには肩をみるに限るのです。柔らかければ、きっと健康です。私は以前三菱重工業の課長をしている須長という人で、剣道の達人で何段かで、好きで始終剣道をやってました。体格がよくて隆々としてました。ただ不思議なことに肩が非常に固いのです。これは肩に力がはいるから肩が固いのです。水泳の選手もそうですが、水泳のほうは片方に行くのです。近ごろはクロールだからそうでもないが、以前は片泳ぎだったから片方が固いのです。ところが剣道は両方とも固いのです。そのころは私も下手だからよく溶けないのです。ところがその人に猛烈な浄化が起ったのです。ちょうど私が昭和一五年の暮れに治療を廃業してそれから間もなくだったのですが、それを頼まれて弟子をやりました。これはなんでも、聞いてみると敗血症とは違うが出血する病気で血を吐くのですが、死にました。死ぬような人ではなくて実によい体格でした。そのころは私は分からなかったが、その後になって肩ということが分かってから、なるほどあの人は肩が特別固かったと思ったのです。それから試してみると、肩の柔らかい人はずいぶん重い病気でも治りがよいのです。それから肩の固い人に限って治り難いのです。そういうようですから、肩がまず健康の急所です。
「『御教え集』二十四号、岡田茂吉全集講話篇第十巻」 昭和28年07月06日