なにしろ中共が北朝鮮を侵略して、ほとんど自分の植民地のようにしてしまったのです。ですからこれは国際正義の上から言っても、やっつけなければならないのです。ところがイギリスは逸早く承認してしまったのです。なんでもよい、平和にさえなれば戦争なんかオレは大嫌いだ、ということになったのです。ところがアメリカはそれを許したら、世界に侵略は公認されることになるから、承認することはできないと頑張っているのですが、そこがアメリカの値打ちのあるところです。いま休戦会談ができそうになりつつありますが、これは一時的なのです。いまアメリカはアイゼンハウアーになってから、大々的に中共征伐をやり始める準備をしているので、いまアメリカに攻められたら息の根が絶えますから、これはたいへんだと、そこでなんとかして一時でもこれを引き延ばす政策をやったのです。アイゼンハウアーはなかなかそんなことにごまかされないで、ともすればやっつけるぞという気勢を見せる。これはいままでのトルーマン大統領のような、時を稼ぐなまぬるいやり方では追いつかない、また先方は一時でもよいから休戦の条件に判を捺しておいて、もっと気長に準備をしなければならないというのが、いま休戦会談がまとまろうという状勢になっているのです。本当に平和にしようというのでもなんでもないので、危ないから一時窮境を逃れ、それと三年の間、朝鮮や連合軍と戦って、瘡痍もそうとう深いから、それもなおさなければならない。そうして国家をもっと充実した状態にして、それからアメリカと戦おうというわけなのです。だからこの休戦会談というものは一時的のものです。そこにもっていって、いま言うようにイギリス、フランス辺りが弱りきってます。しかしフランスはインドシナ辺りが大問題で、あそこに全力を尽くすよりしようがないのです。だから朝鮮問題のほうはまずイギリスより他にないが、そのイギリスがグニャグニャなのだから、そこで米国も、ここは世論の国ですから、連合国の他の国がみんなグニャグニャしているのでは、米国だけがやるというのはおもしろくないというので、では一時お前たちの言うことを聞いておこうというわけです。だからアメリカのほうでも、マッカーシーなどは強硬で、連合国を脱退してアメリカ独自でやろうということを言ってますが、アメリカとしてもただアメリカだけが立つのでは万事都合が悪いので、やっぱりいろいろな関係で、戦争で戦うばかりでは駄目ですから、世界的世論を大いに尊重して、まず戦争をやるにはできるだけ一致をしなければならないから、アメリカは心ならずして一時休戦に応ずるというのが、いまの態勢です。おまけにソ連のほうはスターリンが生きていればもっと腰が強いが、スターリンの死後はずっと腰が折れてますから、とにかく一時収めたほうがよいというように、蔭から中共を牽制しているに違いないです。それでまず米国とソ連が戦争をしたら、ソ連に勝ち目はありませんから、もっと充実しなければ駄目なのです。そんなようで一時休戦によって小康を得るでしょう。そうしておいて今度はソ連がどういう手を打つかですが、あるいはインドシナからタイのほうに侵略を始めるか、それは分かりませんが、とにかくこれから大いに複雑な、結局アメリカを消耗させるという戦術を続けるに違いないです。その手腕たるや、なかなか予想外の手を使うかも分かりません。けれどもどっちにしろ、いつかも言ったとおり、スターリンが死んだ後は骨抜きみたいになりますから、結局なんだかんだと言いながら、ソ連滅亡の時期が来るのです。それはまだそうとう先のことで、そう急なわけに行きませんが、共産主義がなくなるということは、神様のほうではチャンと決まっているのです。それでこれから一番面倒な問題は、たとえ休戦になったとしても、朝鮮が南北に分かれていては、これはアメリカとしてはどうしても黙ってはいられないので、どうしても合併しなければならない。合併するとすれば中共の勢力を北鮮から抜かなければならない。要するに中共を中国に引っ込ませるということになるが、この問題がたいへんです。アメリカはよほど強行にやるでしょうが、そうかといって中共のほうでは唯唯諾諾と引っ込むわけはないから、ここでまた非常に面倒な問題が起るに違いありません。そういうようでまたややこしくなってきます。あるいはアメリカが武力をもって解決しようという態度に出るとすると、また戦争が始まるかも分からないが、どうしてもそういう動き方になるわけです。それで中共が引っ込んで南北朝鮮が合併するということになれば問題は解決しますが、中共もせっかく朝鮮に半分勢力を入れた以上、そうやすやすとは引かないで頑張るでしょうから、そう簡単には解決しないので、朝鮮というものがガンになります。どうしても解決しないということになると、戦争よりほかにないことになります。無論アメリカもその準備をしているから、あんがい急速な場面が出るかも分かりません。だから傍観者としてはなかなか興味津津たるものがあります。話はラジオ解説のようなことになりました。
「『御教え集』二十三号、岡田茂吉全集講話篇第十巻p」 昭和28年06月06日