教集19 昭和二十八年三月五日(2) 

▽前節から続く▽

 日本の政界での、吉田さんの「馬鹿野郎」問題ですが、よほど頭がどうかしていると見えます。あれは男らしくありません。「まったく間違っていた」と責任を負って辞職すればいいのです。そうするとずっと形がいいのです。それをいまもってしがみついて、なんとかしようというこの態度が、いよいよ恥の上塗りという結果になります。これはたしかに間違っているどころではなく、あんまり酷過ぎます。総理大臣ともいわれる者がああいう言葉を発するということは、少し頭がどうかしたとみるよりありません。吉田さんという人は偉いのですが、なんでもかんでも自分のことを押し通そうとするのが欠点です。「負けるが勝ち」という戦法を本当に知らないのです。また知っていても実行できないのです。だからことごとく自分でそういう種をまいているわけです。つまり正直過ぎるのです。もっと食えない人間にならなければならないのです。この点があの人の欠点です。前の福永問題とか最近の広川問題でも、ああいうことをしなくても、ちょっとやればフッと治まってしまうのです。それを妙なところで意地を張ってしまうので、非常に損をしてます。そのために今度の問題も、泥沼に足を突っ込んだように、ぬきさしならぬことになり、結局辞職か解散です。それで解散でおどかしてますが、しかし解散したら、一番損なのは自由党です。今度総選挙になったら、金がたいへんですから……。それであの人の一番惜しいと思うことは、時期ということを知らないのです。つまり講和問題でアメリカに行ったときが、ちょうど花の盛りなのです。あれからだんだん花が散って、もうほとんど凋落<ちょうらく>して、葉まで落ちてきたのだから、もう自分の運命を覚らなければならないのです。それを相変わらず花を咲かせようとしているのですが、そこに間違いがある。こうなると自由党の頭数は、この間の投票でも分かるとおり、数が足りないのです。そうしてみると、もう一日一日凋落しているのです。だからここで潔く引き渡すということが、終わりをまっとうするもっともいいことですが、それをいまもってしがみついているのは、まず時を知らなさすぎます。まるで時局講演のようになりましたが、このくらいにしておきます。

▽次節に続く▽

「『御教え集』二十号、岡田茂吉全集講話篇第十巻p61~62」 昭和28年03月05日