教集18 昭和二十八年一月三日(1)

 私は今年のお正月は久しぶりで朗らかです。というのは、去年の正月も一昨年の正月もまだ裁判が決定してなかったので、それが始終胸にかたまりみたいになって、なんだか晴れ晴れしなかったのです。私もこの年になるまで苦しいこともいろいろありましたが、今度の裁判くらい気持ちの悪いことはありません。それは、どうせああいうことはだれでも気持ちが悪いのですが、私は特にふつうの人より気持ちが悪かったのです。公判廷のそのいやらしさというのはとても我慢ができません。それはなにかと言うと、私が悪いことがあって気がとがめるのならば、どんな苦しいことでもこれはしかたがありません。よくああいう所を地獄だと言いますが、地獄というのはそんな苦しい所ではありません。なぜと言うと地獄は公平無私で少しも事実とくい違いはありません。ですからごく悪い者はごく苦しみますが、そうでなく軽い者は軽いのです。ですから悪いことをした者は「もうしかたがない、オレが悪かったのだから」と思いますから、非常に苦しんでも気持ちがいいことになっているのです。地獄という所は公平ですから決して苦しいものではありません。一番苦しいのは不公平です。これは地獄よりずっと苦しいのです。せめて地獄くらいになったらたいしたものと思います。だから実にいやだったのです。気持ちが悪いのです。それがこの暮れでやっとすんだので、このお正月はさっぱりした気持ちです。

▽次節に続く▽

「『御教え集』十八号、岡田茂吉全集講話篇第九巻p332~333」 昭和28年01月03日