昭和二十七年七月九日 『栄光』百六十四号

明主様とブレーデン博士 御対談

 世界の宗教事情を研究するため、今回日本を訪れた米国イリノイ州ノースウェスタン大学の宗教史および宗教文献学教授のブレーデン博士は、あたかもわが世界救世教の箱根強羅における地上天国模型完成祝典日に当たる去る六月一五日、奇しくもわが明主様と強羅ホテルにおいて親しく対談されたのであった。以下その御対談の顛末である。

ブレーデン博士 私は日本に来ていろいろの宗教を視察し、新しい宗教が非常に活気ある働きをしていることを感じました。アメリカにおいても現在新しい宗教がさかんに活動しています……私は宗教視察のため日本にまいりましたので、少し御意見を拝聴したいのですが、いかがでしょう。

明主様 結構です、なんでもきいてください。

ブレーデン博士 第二次世界戦争が宗教に及ぼした影響についてお話しください。

明主様 善悪両面の影響をうけましたが、悪い影響は一時的で、善いほうの影響は永久的ですから結局プラスだと思います。

ブレーデン博士 特にあなたの宗教にはどんな影響がありましたか。

明主様 終戦までは非常な弾圧をうけたのですが、終戦後は信教の自由が認められてたいへんやりよくなりました。

ブレーデン博士 現在どのくらいの信者がありますか。

明主様 実際に活躍しておる信者は三、四十万くらいでしょう。

ブレーデン博士 終戦前はどのくらいでしたか。

明主様 数百人くらいでした。はとんどが終戦後の信者です。

ブレーデン博士 戦後どうしてそんなに急激に増えたのですか。

明主様 それは戦後の混乱せる人心にもっとも強き光明を与えたためで、なかんずく医薬によらずして病気が治るという……この奇蹟が最大の原因だと見てよいと思います。

ブレーデン博士 その奇蹟について説明してください。

明主様 病気の原因はただ一つで、それは霊の曇りです。肉体に現われる病状はいろいろですが、原因はいずれも一つですから霊を浄めることによって癒されます。しかしこのことは、唯物知識に培われた人々には容易に理解しがたいでしょう。ちょうど大学の講義を小学生にきかすようなものです。いろいろ私のほうで出しておる出版物がありますから、よく読んでいただきたい。

ブレーデン博士 メシヤについてあなたはどうお考えですか。

明主様 私がメシヤの仕事をすべく神命をうけておると信じますが、いまはその時期でないのでボヤかしています。

ブレーデン博士 クリスチャン・サイエンスをどうお考えになりますか。

明主様 クリスチャン・サイエンスは、自己の想念によって病気を治す、いわゆる自力宗教ですが、世界救世教は信じても疑っても病気が治るので、この点完全な他力宗教と言うことができます。キリストも病気を治しましたが、私は私自身病を治すばかりでなく、多くの人々にもその力を授けることができるのです。ここに集まっておる人たち(そこに集まっている幹部三十余名を指し)はみんなその力を授けられております。もし私が嘘を言ったらこの人たちは私を信じなくなるでしょう。

 ここでなお私の言いたいことは、いままでの文明は物質文明で、その中心がアメリカである。東洋の文明は精神文明であり、日本がその中心である。そこでこの両文明が融合されねばならぬ。この両文明……タテ、ヨコ両文明の結ばれた形が十字で、十字架の意義はそこにある。して、いまはまさにそのときで、現にアメリカと日本とが結ばれるところに神意が存するのであります。

ブレーデン博士 非常に興味あるお話を拝聴しました。私もまったく同感であります。

明主様 私も非常に愉快です。いまここであなたとお話しすることにすでに深い意義があるのです。

ブレーデン博士 共産主義に対する御意見をうけたまわりたい。

明主様 共産主義の根本は人類愛と相反するものです。ある特別の階級だけのことを考えるのは神の大愛……平等の愛にもとるものです。戦争中八紘一宇<はっこうういちう>といってた連中の考え方と同様偏愛ですから、神威の前にはやがて消え去るにちがいありません。神を信ずる私としましては問題にしておりません。

ブレーデン博士 あなたの信者で共産主義者がありますか。

明主様 信者で共産主義者はありませんが、共産主義者であった者で、奇蹟を見て神を信じて、信者となった人はあります。神を信ずれば共産主義者はなくなります。

ブレーデン博士 あなたの教団が陰謀を画策したといわれたことがありますか。

明主様 終戦前にはそんな噂をする者がありましたが、戦後はそんな噂はありません。

ブレーデン博士 もっか日本の議会に提出されておる、破壊活動防止法案について、どうお考えになりますか。

明主様 乱暴な行為を防止することは、やむを得ないことだと思っています。共産主義者は、日本人でありながらソ連を援助するのだから、日本人の姿をしたソ連人のようなもので、そんな日本人があってはなりませんし、それに暴力によって革命をやろうとするのですから、これを防止する法案は必要だと思います。

ブレーデン博士 この法案が教団に影響を与える心配はありませんか。

明主様 それは運営の問題ですが、民主主義が発達していけば、この法案が悪用されることもなかろうと思います。とにかく、暴力で社会を破壊しようとするものを取り締まることは先決問題ですから必要でしょう。

ブレーデン博士 共産主義者が日本で天下をとるというようなことはないでしょうか。

明主様 絶対にありますまい。日本はそれほど文化が低いとは思われません。

ブレーデン博士 世界には共産主義を怖れる人があります。アメリカ人の中にもあります。

明主様 共産主義が世界各国にある程度の脅威を与えておることは事実です。その脅威を防ぐために防止法案も必要でしょうし、またある程度の軍備も必要でしょうし、神の存在をはっきり示すことも必要でしょう。

ブレーデン博士 どうか、そのことをトルーマン大統領にも言ってあげてください。

明主様 私の出版物がたくさんありますから、お持ち帰りになってあなたから大統領に渡してください。

ブレーデン博士 残念なことに、私が世界旅行から帰るのは来年の春になります。そのころはトルーマン大統領はその地位にいないかもしれません。

明主様 ははあ……、それでは私のほうから直接、早く送り届けることにしましょう。

ブレーデン博士 今日はいろいろ有益な話をうかがってありがとうございました……さようなら。

明主様 どうか無事に世界各国の宗教御視察をおえられますよう……さようなら。

「『栄光』百六十四号」 昭和27年07月09日