三月六日
御伺い W・Y(四三蔵)。昨年一二月ごろより、夜二時か三時ごろに喘息の発作のような状態になり、御浄霊いたしますと、じき良くなります。食欲は変わりありません。発作の状態は心臓が煽り、顔面蒼白になり、全身油汗のようなものが出て冷たくなります。以前に病名不明でそうとうの薬毒が入っております。六年前に入信。このときも同じ状態が三カ月ほど続き、御浄霊で良くなりました。そのときより較べますと、ずっと良いように思われますが、本人は悪くなったようで、切ないと申します。非常に神経質でわがままに思われます点もございます。これは霊的に関係がございましょうか。
御垂示 霊的ですね。これは死霊が憑るんです。そのときに本人が読めれば良いですが、さもなければ、側の人が祝詞、御讃歌……それを読んであげると良いね。それで治るわけです。で、調べてみて、まだ祀っていない霊があれば、さっそく祀ってあげる。というようにすれば、別に心配になるものじゃないですよ。医者のほうでいう心臓神経衰弱と言うんですね。
御伺い S・Tの次男(三歳)。先月二五日より三十八、九度の熱が出、少量の下痢を日に三、四回いたしておりましたが、二七日午後、急に引きつけを起し、その日は夕方まで遊びましたが、熱はあまり変化なく、二八日よりはまったく食欲がなくなり、ただわずかに水を一口ほど、日に十数回飲む程度でございます。一昨日の二時ごろより、夢中で大声で「母ちゃん」とか「赤ちゃん」と叫び、あやしても受けつけません。それからは、目つきに変わりはありませんが、歯軋りのようなことをし、また手を噛むようなことをいたして暴れます。平素より肩が固く、気短かで、気に入らないと手当たりしだいに物を投げたりいたし、気難しい子でございます。体にはさほど熱はございません。頭、主に後頭部、延髄に熱がございます。また昼夜の別なく発作的に騒ぎます。これは霊的でございましょうか。
御垂示 これは霊的ですね。やっぱり、死んだ赤ん坊の霊ですね。身内になければ、親類とかなにかで、つまり迷っているわけですね。これも祝詞、御讃歌を聞かしてやるんです。そうして前頭部の中を浄霊してやると良いです。それでだんだん良くなるわけです。
御伺い O・E(一七歳)。生後六カ月ごろ風邪を引いて、以来高熱が続き、脳膜炎とのことで、注射や薬を続けました。以来十五、六年間あらゆる治療、祈禱をいたしました。整形手術をし、脊髄注射六本うっておりますが、なんの効果なく、長年寝たままにてダルマ同様でございます。昨年夏より御浄霊をいただくようになり、私(父)が入信、御浄霊をいたしております。私の父は三〇年前に心臓病で死亡、母は昭和一八年脳溢血にて死亡、上の姉は大正九年、下の姉は昭和一七年脳病にて死亡。そのため母は熱心な天理教の信仰をいたしておりましたが、母亡き後はお詣りしておりません。私の家は臨済宗妙心寺派の檀家で先祖よりお祀りいたしております。これは霊的でございましょうか。御浄霊の急所につき御垂示のほどお願い申し上げます。
御垂示 これは霊的じゃありませんね。つまり脳膜炎のときに、注射と薬で固めたんですね。無論氷冷したに違いない。脳膜炎というのは前頭部の浄化ですからね。ここを固めちゃった。そのために手と足が動かなくなったんです。やっぱり、この因が中にあるんです。あらゆる治療というのが悪いんです。これをしなかったらね。おまけに整形手術……どこをやったんですかね。脊髄注射六本……これも悪いですね。このために経過が悪いんです。これがなかったら、脳膜炎なんてわけがないですよ。これはぜひ治してあげたいですね。急所はこの(前頭部)中ですからね。この中に固まっているから、これをやれば良いんですが、力を入れちゃいけませんよ。力を抜いてね。ただ、整形手術を、どういうふうにやったか判りませんかね。これさえたいしたことをしてなかったら治りますね。手足の筋でも切ったんですか。判らないですか。
御伺い 足の麻痺した部分と、右足の付け根をいたしております。
御垂示 左は。
御伺い いたしておりません。
御垂示 左も動かないですか。それじゃ、ここ(頸部淋巴腺)を中心にやって、これ(頸部淋巴腺)に固まりがあるから、これをやってご覧なさい。治るわけです。力を入れちゃいけませんよ。
御伺い 光明如来様はまだでございます。
御垂示 それじゃ駄目だ。光明如来様をお祀りしてある部屋に寝かせるようにするんです。そうすると早い。そうすると、下手にいっても、片っ方の杖ついて歩けるくらいにはなりますよ。
御伺い N・T(四七歳)。昭和二六年一月肋膜炎再発し、生命危篤を御浄霊でお救いいただき、一カ月ほどで教会に通わせていただくようになり、夏には家業(鮎の集荷)もできるようになりましたが、一〇月三一日名古屋別院にて明主様に御面会いただきましてより、全身御浄化をいただき、ちょっとした運動にも息切れがして、呼吸困難となり、床に就くようになりました。現在は頭重、肩の重圧感があり、痰はヌラのようなものが続いて出ております。食欲はございませんが、二杯くらい食べられますが、少しずつ衰弱しております。教会より御浄霊に来ていただくようになりましてから、暖かい日は二、三時間は起きておりますが、長くなりますと寒気がいたし疲れます。昼間より夜間は用便に起き、動いた後は胸の圧迫感が特にひどく苦しみます。なお本人は四年前重い湿性肋膜炎にて四カ月ほど医療を受け捗々しくございませんでしたが、お道にて治していただきました。光明如来様は昭和二六年一月に御奉斎させていただきました。御浄霊の急所につき御教示のほどお願い申し上げます。
御垂示 二杯くらいだったら、食欲はなくもないじゃないですか。急所をはずれているんだ。こんなのはわけなく治るんですがね。肋膜というものは再発するに決まったものでね。やっぱり、以前に固まっている所があったんです。それは、胸から背中から触ってみると、熱い所が必ずありますからね。この人は熱がそうとう出るんです。肩から頸に熱がある所があるから、そこを浄霊するんです。そうすると熱がだんだん冷めてきますからね。そうすると、食欲が起ってだんだん治ってきます。
咳は。
御伺い あまり出ません。
御垂示 なんでもないですがね。あなたは力を入れやしないでしょうね。抜いているですね。
御伺い 私がまいりますと楽になりますが、奥さんや近所の方がいたしますと。
御垂示 そういう人にやらせなかったら良い。あなたがやれば良い。
御伺い 毎日は行けませんのでございます。
御垂示 毎日でなくても良い。こんなのはわけないです。
御伺い 昨年一月より五回ほどいたしております。
御垂示 そうすると一カ月行かない月もあったんですね。
御伺い さようでございます。
御垂示 まだ、いまやっている人の霊力が足りないんだ。だから溶けないんです。あなたがなんとかして助けてやりなさいよ。遠いんですか。
御伺い 一里ほどでございます。
御垂示 なんでもないじゃないですか。
御伺い 親戚が反対でございまして。
御垂示 それだ。それで治りが悪いんです。それじゃ困るな。そういうのを無理にやると、また問題を起しますから、そういうのは逃げたほうが良いな。
御伺い 本人は医者にかかりたくないと申します。本人も奥さんも一生懸命でございまして。
御垂示 お祀りはしてないですね。
御伺い お祀りいたしてございます。
御垂示 その反対者がたくさん……そんなにあると、その霊が邪魔するんです。治らないとたいへんだというんじゃないんです。治るとたいへんだというんです。救世教に自分たちが頭を下げなければならないからね。だから始終その想念が邪魔するんでね。それで、もしか間違いで治らないことがあると、そうれ見たことかと、それを宣伝する。やっぱり邪神ですからね。親切な悪魔というやつでね。別に命には危険はないんですね。衰弱が増すようなら危ないな。
御伺い 医者に見せるように言ってありますが、一日延ばしにしております。
御垂示 それは困るな。やっぱり、お医者さんに診てもらわなければいけないですよ。
御伺い 親戚は、いまなら入院すれば治るとやかましく言います。
御垂示 そいつは面倒だな。やっているのは。
御伺い 奥さんと近所の人が。
御垂示 それじゃ治りが悪いから、死にでもすると、そうれ見たことか、宗教に迷って、とんでもないことになったと。とにかくこう言ってやるんだね。親戚や、そういう周囲の方たちが、みんな賛成して、そういう方から、どうか助けてとお頼みになるなら良いですが、どうもそういう反対者があるところは具合が悪いから、あなたが親戚兄弟に了解をさせて、いま言ったようになったら、やってあげます。さもなければ、やってあげるわけにいかないからと、はっきり断るなり、他の者が頼むなりして、どっちかですね。やるやらないと、はっきりしたほうが良い。そうでなければ問題を起しますよ。
御伺い H・E(五三歳)。二五年一〇月ごろより胃潰瘍で、自宅で療養しておりました。本年一月胃癌となり、二月に光明如来様を御奉斎させていただきました。最近食欲減退して衰弱を増し、一杯の食事もあまり入らず、ときどきヌラを三合くらい吐きます。また泡状のときもございます。昼夜寝られず坐ったままにて、胃付近が苦しく足が痺れております。便は三、四日目に一回少量いたします。三月二日に突き上げてまいり、たいへん苦しみました。本人は以前信仰しており、薬はあまり使用いたしておりません。いかがいたしましたら、よろしゅうございましょうか。
御垂示 これは駄目だな。これはよろしく……お断りしたほうが良いですね。これは本当の癌ですよ。ときどきヌラを……これは立派な癌ですからね。それで、一日一杯の食事……これはもう駄目ですね。だから家の人に、とうてい見込みはないと言って、よろしく止すというようにしたほうが良いですね。
御伺い H・T(本年一月入信。四三歳)。御神体はまだ御奉斎させて戴いておりません。三年ほど前に肺結核で七カ月入院いたし、約八○本のマイシンと注射と薬を続け、退院後一年ほど薬を続けておりました。昨年一〇月ごろより咳が多くなり、ときどき胸を締めつけるようになり、疲れると咽喉が詰まりあげますが、別になにも出ません。体も重く感じます。昨年一二月末より御浄霊をいただくようになりました。御浄霊の箇所につき御垂示お願い申し上げます。
御垂示 これは薬毒ですね。いま食欲はどうなんですか。
御伺い 軽く二杯くらいでございます。
御垂示 衰弱は増すわけじゃないですか。増さないですか。
御伺い 増してはおりません。
御垂示 衰弱さえ増さなければ必ず治りますよ。ただ、これだけの薬の出るために、いずれ大浄化が起りますがね、まだこの人は薬が効いているんですよ。薬がまだふつうなんですが、いよいよ……薬は抑えつけですからね……抑えつけが切れると、大浄化が起る。そうすると熱、咳、痰ですからね。いま咳、痰がずいぶんあると、そうすると衰弱の憂いがあるんでね。けれども割合に、この人は芯は丈夫なんです。だから気長にやったら治るわけですがね。気長にね。毎日やっているんですか。
御伺い さようでございます。
御垂示 毎日ほどでなくても良いですね。一週間に二度でも三度でも良いですよ。それで、なるべく大浄化の起るのを延ばしたほうが良い。そうすると、いくらか軽くなるからね。それまでに減っていくからね。一週間に二度か三度にしなさい。
御伺い 御浄霊の箇所は、どこを。
御垂示 引っ詰められるというのは、胸ですね。
御伺い さようでございます。
御垂示 そうすると肋間の間に毒があるんだから、胸から背中……そういう所を押してみて、痛い所があったら、そこに固まりがあるんだから、それが胸を締めつける因だからね。痛い所がなければ、熱のある所があります。たいてい、そういうのは肋間だな。熱がある所があるから、そこを浄霊すれば良い。そうすれば、それは割合にわけなく治るんです。あとは頸のまわりだな。そこに固まりと、熱のある所があります。それを浄霊する。それで治っていくわけですがね。
御伺い K・T(二八歳)。頭痛や頸、肩が凝り、顔は常に赤く、怒りやすい性格でございます。昭和二五年一〇月ごろより、苦痛もなく眼がしだいに見えなくなり、二三日急に発熱し、耳下腺、延髄、後頭部が非常に苦しく、首が自然に前後に振れ、頭の中がゴンゴン音がして、話し声が聞き取れず、脈拍は結滞し危篤状態でございました。その後は眼は赤く腫れ上がり、涙が多量に出るようになり、幾日か続きました。御守護いただき熱は下がりましたが、両眼は失明いたしました。一二月六日髪を手入れしておりますと、一本残らず抜けてしまいました。その後一カ月間は一日三、四回着物を着替える程度の発汗があり、解熱いたしましてより、白い毛が生えてまいり、御浄霊をいただきましてしだいに黒髪に変わり、元通りにさせていただきました。眼は瞳孔が白くなっており、視力はまったくございませんが、黒い水玉のごときものが上がったり下がったりいたしております。後頭部は重苦しく、御浄霊をいただきますと眼が痛み涙が出てまいります。またときどき下痢もいたします。御神体、御屏風観音様は御奉斎させていただいております。なお、夢で赤い蛇を見ました。これは霊的関係がございましょうか、御浄霊の箇所御垂示お願い申し上げます。
御垂示 黒髪に……これは良いな。これは別に霊的関係はありませんね。これは毒ですよ。薬毒が頭に固まっているんです。それで毛が抜けて……その毒が固まっているんですから、これは治りますよ。黒い水玉……これは目の悪い人は、必ずそういうことはある。後頭部……頸と頭ですね。涙……こういうのは必ず治りますよ。それから、夢で赤い蛇というのは、蛇が救ってもらいたいんです。それで、目でも白くなっている目がありますがね。ああいうのは、きっと治るものです。あれは、膿が固まっているんだからね。だから安心して根気良く浄霊をやりなさい。浄霊の急所は頭だからね。頭の中にうんと毒があるんです。それから頸、肩ですね。その辺もありますからね。それを浄霊して、それで良いです。二八の婦人ですね。早く……急いで治さないと、結婚もできないことになっちゃう。
御伺い H・H(『御教え集』三号〔第五巻四七頁一行目〕御伺い)。左足踵の魚の目をメスにて疵つけ、その後左足はぜんぜん痛まず、右足の御浄化となり、現在膝のみ屈伸できますが、右腰はぜんぜん動かず、足を開いた形でおります。大腿部の上部に固い「しこり」があり、水膿をもち、相当量の排膿がございます。また右腕上膊内側に縦六センチメートル、横三センチメートルくらいが水脹れより皮膚破れ真っ赤に爛れ、膿が出ておりますが痛みはございません。食欲はございます。昭和四年に河合雨峰という画家より一筆書きの龍を買い、そのとき「私は龍に命を取られそうな気がするので、これからは書かないようにする」と言い、その後間もなく他界したとのことです。H・Hは辰年でございますが、これとなにか関係がございましょうか。また軸物の処置につきましてお伺い申し上げます。
御垂示 河合雨峰というのは、私は良く知ってます。一筆書きの龍を書いて、それをほうぼうになにして、生活していたんです。書家ですがね。光明如来様はお祀りしてあるんですね。
御伺い お祀りしてございません。
御垂示 お祀りしなければ駄目ですね。お祀りしてから、雨峰の書いた龍神……あれはみんな霊が入ってますからね……それを家にしまっておいて、一年くらい経ってから焼けば良いんです。それから、大腿部の上部……毒が多いんですよ。ほうぼうに固まっているんだ。それで動かないんだから、まあ……こういうものは、少し根気良くやれば必ず治りますよ。別にたいしたものじゃない。それで、光明如来様をお祀りして、その部屋に寝かせるようにする。そうすれば、ほうぼうから穴があいて出て、すっかり治りますよ。
御伺い Ⅰ・F(『御教え集』七号〔第七巻七二頁一二行目〕御伺い)。さっそく教会よりも御浄霊にまいらせていただき、御神書も拝読させていただきました。特に『霊界叢談』を拝読いたしますと非常に楽になると申します。咳と痰は出ておりますが、たいした苦痛はなく、夜分はその度に目が醒める程度でございます。食事は一杯くらいおいしくいただきます。両肺に軽いラッセルが聞こえますが、深く呼吸しましても痛みはございません。声は嗄れておりますが、食事にはあまり支障はございません。右側腎臓部に「八つ頭」のような図絵があり、御浄霊後間もなく多量の下痢がございました。翌日は右脚が甲まで浮腫み歩けなくなりましたが、腎臓部の固結はなくなっておりました。その翌朝御浄霊を始めますと、急に寒気を催し、しばらくして恢復し、終わると間もなく下痢がございました。尿は一日二回程度で、右脚は未だに浮腫んでおります。この家は、結核で、祖母の兄弟五名、父の兄弟三名死亡しております。
御垂示 これは良いですよ。これは順調ですよ。治りますよ。やっぱり、腎臓のなにが影響している。この固まりが溶けて、足に下がって浮腫んだのだから、これもだんだん取れてきますよ。このまま続ければ治ります。
御教え いま評判になっている三越の興福寺の宝物の展覧会ですが、あそこに行ってみたんです。阿修羅という評判の彫刻ですがね。私は、阿修羅というから、ものすごい顔をした……手が六本あるんですからね。ギュツと、こうやっているのかと思ったら、まるっきり違っているんですよ。十七、八の娘のような顔をした、実にかわいらしい顔なんですよ。で、なるほど良く考えてみたら、阿修羅が改心して、ちゃんとふつうの料簡になったというわけですね。だから、名前とは大違いでね。ただ、阿修羅という名前でなく、阿修羅元とか、あるいは阿修羅の改心元とかいう題名をつけるのが本当だと思いますね。とにかく作は非常に良いんですね。良くできてます。新聞に一億なんて出てましたが、評価として、新聞はたいてい少し大きく書きますからね。その他に烏天狗の童子の姿をしたの、それから童子の乾漆……これは非常に良くできていた。阿修羅とあと四体の、やはり等身大ですが、童子。それだけですね。見るべき物はね。あとは見るべき物はない。なお、鎧や刀がずいぶんありましたがね。鎧や刀があるのは変ですがね。興福寺が僧兵のものを……もっとも藤原家と縁の深い寺ですからね。ところでおもしろいことは、お寺の美術ですから仏像が多いと思ったが、観音さんもお釈迦さんも薬師如来とか弥勒菩薩とかあるが、そういうのがないんです。良く考えてみると、そういうのは売っちゃったんですね。なにしろお寺が、長い間の財政難で売らなければ追っつかないので、ボツボツ売ったんでしょうね。道具屋は、他の物は買わないですからね……仏像でなければね。それで、ボツボツ出したんです。そんなようなわけで、次の時代は天平時代ですからね。一二〇〇年前ですね。一二〇〇年前に、これほどの巧みな彫刻ができたというのは、実に驚くですね。私は、このごろ仏像の研究をしてますが、研究すればするほど、実にたいしたものですね。たいてい良い物は推古朝以後、白鳳、天平、飛鳥、弘仁までですね。弘仁から藤原になるんですからね。弘仁までの仏像の彫刻というのは、たいしたものです。その後藤原もそうとうできました。それから鎌倉になってから俄然として木彫の大隆盛となった。一番巧みな物は、鎌倉時代が一番多いです。けれどもあまり巧みすぎて、かえっておもしろ味は天平時代が一番良いですね。奈良では法隆寺が断然群を抜いてますがね。法隆寺は、昔からやかましいから、一品といえども外に出すことや、売ることはできないですからね。仏像の一番良いのは法隆寺ですね。その次が興福寺ですね。法華寺、東大寺、薬師寺があるが、私は一度行って、奈良のお寺参りをやろうと思っている。天平時代の彫刻を見ますと、ロダンなんか足下にもつかないですよ。だから、日本の仏教彫刻が世界的に知れたら、驚きます。だいたい、仏像は支那の六朝から習ったんです。一六〇〇年くらい前ですね。そのとき支那で始まって隆盛時代になったですね。それから唐の時代ですね。唐の時代に入って、それを学んだのが推古仏ですね。そうすると、推古仏になると支那の仏よりずっと良いんです。良く見ると、支那の仏はどこか間が抜けたようでね。ところが、推古仏になるとずっと良いんです。顔から形から、すべてが調ってね。実に良くできている。ですから、外人の一部では、中には日本の仏像に趣味を持って、非常に欲しがっているんですが、なかなか手に入らないので困っているようですが、そんなような具合で、日本人というのは美術思想において、断然世界一と言って良いですね。この間も、アメリカから……この前に話した繭山という人が、サンフランシスコの展覧会の主任になって行った人ですが、いろいろアメリカ人に説明して、それを仕事にしたんですが、帰りがけにアメリカの博物館、美術館をみんなまわって見てきて、私の所に来て、いろいろ話し合ったんですが、その人が言うには、日本人の美術の頭というのは、世界一だと言うんです。というのは、外人はやっぱり美術で理解できない点があるんですね。このごろやっと、アメリカなんかも、そうとう解りかけてきたですが、つまり解り方が浅いんですね。深さや高さというのは、とうてい日本人に追っつかないんです。アメリカ人は、そうとう支那の美術は研究されてます。支那のは手に入りやすかったですからね。日本のは手に入らなかった点もありますが、研究されなかった点もあります。去年のサンフランシスコの展覧会から俄然として、日本美術ということが解ったですね。だいぶ熱が出てきて、欲しがる人がある。
仏像が行きましたが、断然世界一だといってますね。支那の仏像なんかかなわないですね。今度私のほうにできる箱根の美術館でも、アメリカ人なんか注目して、喜ぶだろうと思います。いろいろ話したいことがあるが、時間がないから、そのくらいにしておきます。